ヴェルディ:歌劇《ドン・カルロ》全曲(4幕版)
カラヤン指揮ベルリン・フィル、ウィーン国立歌劇場合唱団、ソフィア国立歌劇場合唱団、ザルツブルク・コンツェルト合唱団
カレラス、カプッチッリ、バルツァ、フルラネット、イッツォ・ダミーコ、サルミネン
1986年、ザルツブルク復活祭音楽祭での上演を記録した映像作品。カラヤン自身の演出・指揮に加え、カラヤンのお気に入り、ギュンター・シュナイダー=ジームセンによる舞台装置に、録音担当が長年のセッションでの右腕、ギュンター・ヘルマンスと好条件の揃った重厚華麗な名舞台の上質な記録。
約177分というヴェルディ作品中、最大規模の長丁場オペラながら、超絶技巧の《ヴェールの歌》、熱く盛り上がる《誓いの二重唱》、独奏チェロも印象深い国王の嘆きの歌《一人寂しく眠ろう》、王妃による祈りの歌《世のむなしさを知る神》など聴き応えのあるナンバーが延々と連なる密度の濃さのおかげで、飽きることがまったくありません。
また、原作がシラーの重厚な悲劇ということもあり、修道院、宮廷から宗教裁判所、火刑場にいたるまで、場面によって、華麗、重厚、荘厳、神秘的な雰囲気も満点という実に変化に富む劇進行がオペラティックな快感にどっぷり浸らせてくれます。
歌手陣も、そういった全編ハイライト級といった状態に完璧に対応する豪華きわまりない大物揃いで、随所で感銘深い歌を聴かせています。
また、歌唱だけでなくルックスまで加味されて選ばれたと思われる視覚的な条件は非常に高水準で、ヴェルディ随一といってよいゴージャスな内容にふさわしい視覚&聴覚情報が、オペラ鑑賞の醍醐味を味わわせてくれること請け合いです。
カラヤンの指揮もシリアスをきわめ、フィリッポ役とエリザベッタ役、それぞれの10分を超える長大なアリアにおけるオケ・パートの扱いなどさすがの雰囲気。ベルリン・フィルの重厚かつ技術的練度の高いサウンドが、この曲の通常の伴奏とは次元の異なる響きを聴かせてくれるのが嬉しいところです。
まさに重量級の名舞台。この内容でこの価格はお買い得です。 イタリア語。
なお、カラヤンがここで採用している楽譜は、ヴェルディがその晩年、オテロ作曲の頃に大幅に手を加えたという4幕版で、オーケストレーションの充実ぶり、無駄の無い筋運びが、版の問題で錯綜するこの作品の中にあって、決定版としての地位を長く保っている理由を痛感させてくれます。
ちなみに5幕版に存在したフォンテーヌブローの森の場(第1幕)は、シラーの原作には無い、台本作者たちによる追加場面で、4幕版では、5幕版でいうところの第2幕からスタートします。
字幕:英語・ドイツ語・フランス語
収録:1986年3月、ザルツブルク祝祭大劇場 177分
画面:スタンダード、カラー
音声:リニアPCM ステレオ
記録層:片面・2層