ワーグナー:オペラ大全集(43CD)
クナ、カラヤン、カイルベルト、ほか
再開したバイロイトを飾ったクナッパーツブッシュ、カラヤン、カイルベルトによる記念碑的な上演のライヴ録音から、マイナーな初期オペラの録音まで、ワーグナーのオペラすべてを集めた激安コレクションの登場。
モノラルの録音も聴きやすい音質に仕上がっており、往年の巨匠たちの名演を十分に味わえるほか、『指環』と『妖精』では1990年代の新しい録音が選ばれているため、現代の劇場での臨場感も楽しめるなど多彩な内容が魅力となっています。(HMV)
『パルジファル』全曲
クナッパーツブッシュ&バイロイト
戦後、バイロイトが再開した記念の年のライヴ録音。音楽を志して以来一貫してワーグナーを熱烈に賛美し、彼の作品上演のために身を捧げてきたクナッパーツブッシュは、卒業論文でパルシファルのクンドリーをテーマにするほど若いときからこの作品に傾倒していました。この年、バイロイトに初めて登場したクナは、聖地に巡礼してきた、音に飢えたワグネリアンに終生忘れることのない深い感銘を与えたのです。
この『パルジファル』では、ヴィントガッセン、メードル、ヴェーバー、ロンドン、ウーデといったワーグナー演奏史上に燦然と輝く名歌手達が、特別な公演ゆえ緊張感漲る歌唱で圧倒的な存在感を示して絶好調。
トータル4時間32分と、後年の録音に較べてかなりゆったりとしたテンポが採択されていますが、演奏は自在ながらも細部にまで神経の行き届いた高水準なもので、この長丁場の全てに渡って間然するところのないのはさすがとしか言いようがありません。
後にワーグナーの使徒と謳われるジョン・カルショウ(&ケネス・ウィルキンスン)による録音は、モノラルながらいまだに輝きを放っています。
ズシリと腹に響く低音の凄みから繊細な高音域まで、デッカならではの生々しいサウンドに捉えられており、「聖金曜日の音楽」など素晴らしく感動的。ルートヴィヒ・ヴェーバーの熱唱と、どこまでも高揚する崇高な音楽が見事なマッチングを見せた、クナとしても滅多にないほどすごい演奏をモノラルとしてはかなりの情報量で伝えてくれているのです。しかも続く「場面転換の音楽」での巨大なスケールと金管の迫力、低弦の凄みには言葉もありません。
・舞台神聖祝典劇『パルジファル』全曲
ヴォルフガング・ヴィントガッセン(T:パルジファル)
マルタ・メードル(S:クンドリー)
ルートヴィヒ・ヴェーバー(B:グルネマンツ)
ジョ−ジ・ロンドン(B:アンフォルタス)
ヘルマン・ウーデ(B:クリングゾル)
アルノルド・ファン・ミル(B:ティトゥレル)
ヴィルヘルム・ピッツ(合唱指揮)
バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団
ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)
録音時期:1951年7&8月
録音場所:バイロイト祝祭劇場
録音方式:モノラル(ライヴ)
『マイスタージンガー』全曲
カラヤン&バイロイト
破滅的な世界大戦が終結して6年の歳月が流れた1951年7月、フルトヴェングラーが指揮する「第9」により、ナチスドイツ時代の呪縛にあえいでいたバイロイト音楽祭が劇的に再開されました。
フルトヴェングラーに代わって楽劇の指揮を取ったのは、共にバイロイトは初めてとなるカラヤンとクナッパーツブッシュです。
新時代の旗手としてスターへの階段を駆け上りつつあったカラヤンによる『マイスタージンガー』は、トータル4時間27分と、後年のドレスデン盤よりもわずかに演奏時間が長くなっていますが、演奏から受ける印象はかなり率直な雰囲気のものです。
キャストはフルトヴェングラーの第九のソリストのうち3人が主役に登場するという豪華なものです。
・楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』全曲
オットー・エーデルマン(B:ザックス)
ハンス・ホップ(T:ヴァルター)
エリーザベト・シュヴァルツコップ(S:エーファ)
エーリヒ・クンツ(Br:ベックメッサー)
ヴィルヘルム・ピッツ(合唱指揮)
バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
録音:1951年8月
録音場所:バイロイト祝祭劇場
録音方式:モノラル(ライヴ)
『さまよえるオランダ人』全曲
クラウス&バイエルン
第二次世界大戦末期におこなわれた放送用のセッション録音。時代を考えるとモノラルとはいえかなり聴きやすい音質です。
演奏時間は2時間22分。クラウスのテンポは快活なもので、引き締まった構築ぶりはさすが。歌手では若きハンス・ホッターの凛々しい声によるオランダ人役が聴きもので、ゼンタ役のウルズレアク(クラウス夫人)も好演していました。
・歌劇『さまよえるオランダ人』全曲
ハンス・ホッター(B:オランダ人)
ヴィオリカ・ウルズレアク(S:ゼンタ)
ゲオルク・ハーン(B:ダーラント)
カール・オステルターク(T:エリック)
バイエルン国立歌劇場管弦楽団&合唱団
クレメンス・クラウス(指揮)
録音:1944年3月
録音場所:バイエルン国立歌劇場
録音方式:モノラル(セッション)
『トリスタンとイゾルデ』全曲
フルトヴェングラー&フィルハーモニア
EMIによるセッション録音。二人の偉大なワグネリアン、フルトヴェングラーとフラグスタートが残した不朽の名盤。この濃厚きわまるロマンと呪縛的な官能をそなえた超名演は、フルトヴェングラーのそれまでの録音嫌いを返上させたほどの成果を上げた一方、第2幕のクライマックスでの高音をレコード会社が無断ですげ替えてしまったことにフラグスタートが傷ついてしまい、彼女の引退のきっかけとなった、という逸話でも知られています(ちなみに、問題の一音を歌っているのは、フラグスタートの親友でもあったシュヴァルツコップ)。
・楽劇『トリスタンとイゾルデ』全曲
キルステン・フラグスタート(S:イゾルデ)
ルートヴィヒ・ズートハウス(T:トリスタン)
ヨゼフ・グラインドル(B:マルケ王)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br:クルヴェナール)
ブランシュ・シ−ボム(M:ブランゲーネ)、他
コヴェントガーデン王立歌劇場合唱団
フィルハーモニア管弦楽団
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
録音時期:1952年6月
録音場所:ロンドン、キングズウェイ・ホール
録音方式:モノラル(セッション)
『ローエングリン』全曲
カイルベルト&バイロイト
1953年のバイロイト・ライヴを収録したデッカ録音の復刻。若きヴィントガッセンをはじめ、ウーデ、ヴァルナイ、グラインドル、スティーバー、ブラウン、など豪華なワーグナー歌手たちの競演、出演者とオケ、そして聴衆から絶大な信頼を集めていたという、純ドイツ風の巨匠カイルベルトの指揮が魅力の名演として、以前から有名なものです。
・歌劇『ローエングリン』全曲
ヴォルフガング・ヴィントガッセン(T:ローエングリン)
エリノア・スティーバー(S:エルザ)
アストリッド・ヴァルナイ(S:オルトルート)
ヘルマン・ウーデ(B:テルラムント)
ヨゼフ・グラインドル(B:ハインリヒ)、他
バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団
ヨゼフ・カイルベルト(指揮)
録音時期:1953年7&8月
録音場所:バイロイト祝祭劇場
録音方式:モノラル(ライヴ)
『タンホイザー』全曲
ヘーガー&バイエルン
・歌劇『タンホイザー』全曲
アウグスト・ザイダー(T:タンホイザー)
マリアンネ・シェヒ(S:エリーザベト)
オットー・フォン・ローア(B:ヘルマン)
カール・パウル(Br:ヴォルフラム)
リタ・シュトライヒ(S:牧童)、他
バイエルン国立歌劇場管弦楽団&合唱団
ロベルト・ヘーガー(指揮)
録音時期:1951年
録音場所:ミュンヘン、バイエルン国立歌劇場
録音方式:モノラル(ライヴ)
『ニーベルングの指環』全曲
ノイホルト&バーデン
Bella Musicaレーベルのライセンス盤。カールスルーエ市はドイツの南西部、ライン川の東に位置する人口約26万の中規模都市ではありますが、この都市が持つオペラ・ハウスは1851年開場という歴史を持ち、音楽監督にヘルマン・レヴィやフェリックス・モットル、ヨーゼフ・クリップス、ヨーゼフ・カイルベルトを擁していた由緒正しい劇場です。
演奏は当時の音楽監督ギュンター・ノイホルトの指揮。いわゆるスター主義と一線を画する、ドイツ・オペラの日常公演と伝統に根ざした等身大のスタイルを聴かせてくれます。歌手陣にはオルトルン・ヴェンケルやボード・ブリンクマンといった国際級の歌手のほか、ドイツの地方劇場でヘルデン・テナーとして活躍中のヴォルフガング・ノイマンなど、ドイツ国内では著名な地元歌手の水準を確認できる楽しみもあります。
・楽劇『ラインの黄金』全曲
ジョン・ヴェーグナー(B:ヴォータン)
ハンス=イェルク・ヴァインシェンク(T:ローゲ)
オレク・ブリヤーク(Br:アルベリヒ)
サイモン・ヤング(B:ファゾルト)
マルコム・スミス(B:ファフナー)
ヴィリヤ・エルンスト=モスライティス(M:フリッカ)、他
・楽劇『ワルキューレ』全曲
エドワード・クック(T:ジークムント)
ガブリエレ・マリア・ロンゲ(S:ジークリンデ)
ジョン・ヴェーグナー(B:ヴォータン)
フローデ・オールセン(B:フンディング)
カルラ・ポール(S:ブリュンヒルデ)、他
・楽劇『ジークフリート』全曲
ヴォルフガング・ノイマン(T:ジークフリート)
ハンス=イェルク・ヴァインシェンク(T:ミーメ)
カルラ・ポール(S:ブリュンヒルデ)
ジョン・ウェーグナー (B:さすらい人)
オレク・ブリヤーク(Br:アルベリヒ)
オルトルン・ヴェンケル(A:エルダ)、他
・楽劇『神々の黄昏』全曲
エドワード・クック(T:ジークフリート)
カルラ・ポール(S:ジークリンデ)
マルック・テルヴォ(B:ハーゲン)
オレク・ブリヤーク(Br:アルベリヒ)
ボド・ブリンクマン(Br:グンター)
ガブリエレ・マリア・ロンゲ(S:グートルーネ)、他
カールスルーエ・バーデン州立歌劇場管弦楽団
ギュンター・ノイホルト(指揮)
録音時期:1994&95年
録音場所:カールスルーエ・バーデン州立歌劇場
録音方式:デジタル(ライヴ)
『リエンツィ』(短縮版)
ツィリッヒ&ヘッセン放送響
全曲を演奏すると3時間半前後の『リエンツィ』ですが、内容に比して長過ぎるという見解からか、ドイツでは長年に渡って二時間半程度に凝縮した短縮ヴァージョンでの演奏が一般的でした。ここでのタイムも2時間36分と短縮版として標準的なものとなっています。
演奏は1950年に収録された放送用のセッション録音で、モノラルながら聴きやすい水準。主役リエンツィは、フルトヴェングラーにも重用されていたトレプトウが歌っています。
・歌劇『リエンツィ』全曲(短縮版)
ギュンター・トレプトウ(T:リエンツィ)
トルーデ・アイッペルレ(S:イレーネ)、他
ヘッセン放送交響楽団&合唱団
ヴィンフリート・ツィリッヒ(指揮)
録音時期:1950年
録音場所:フランクフルト
録音方式:モノラル
『恋愛禁制』全曲
ヘーガー&オーストリア放送響
ワーグナー2作目のオペラ。パレルモの修道女という副題を持つシェイクスピア作品をもとにした作品。演奏時間2時間4分。
・歌劇『恋愛禁制』全曲(2CD)
ハインツ・イムダール
クルト・エクヴィルツ
アントン・デルモータ
ヴィリー・フリードリヒ
エルンスト・ザルツァー
ヒルデ・ツァデク
クリスティアーニ・ソレル
ルートヴィヒ・ヴェルター
ハンネローレ・シュテフェク
オーストリア放送交響楽団&合唱団
ロベルト・ヘーガー(指揮)
録音:1962年
録音場所:ウィーン
録音方式:モノラル
『妖精』全曲
エトヴェシュ&カリアーリ
イタリアのダイナミック・レーベルのライセンス発売。ワーグナー最初のオペラ。カルロ・ゴッツィの『蛇女』をもとにした作品。演奏時間は3時間。
・歌劇『妖精』全曲
ユルキ・コルホネン(Bs)
スー・パッテェル(S)
ウルリケ・ゾンターク(S)
マヌエラ・クリスチャック
ライモ・シルキア(T)
アルトゥール・コーン(Bs)
カリアリ・テアトロ・コムナーレ管弦楽団&合唱団
ガボール・エトヴェシュ(指揮)
録音時期:1998年1月
録音場所:カリアリ・テアトロ・コムナーレ
録音方式:デジタル(ライヴ)