Dreamer The Believer

ラッパーとしてだけでなく、俳優としても活躍、最近は自叙伝を出したりと多彩な活動を続けているシカゴのラッパー、コモンが自身のレーベルThink Common Musicを立ち上げ、新天地Warner Bros. Recordsを通して発表する9thアルバム。プロデュースを担当するのはコモンの初期の傑作アルバムを手がけてきた盟友でありDef Jamの副社長に就いたNo.I.D.が全曲担当。アルバムに先駆けて発表した「Ghetto Drems」は、コラボ・アルバムの予定もあるナズを迎えた楽曲で、切れ味鋭い2人のラップと男臭いトラックは往年のファンはもちろん、ヘッズ達をも興奮させた。同様にPVの世界観がヘヴィなビートとマッチする「Sweet」等、コモンの当初から持つコンシャスなイメージに合った楽曲も収録。但し、アルバム全篇を通して感じられるのは、コズミックな夢想の世界へと誘うオープニング「The Dreamer」や、カニエがラップしそうなELO「Mr Blue Sky」使いが印象的な「Blue Sky」をはじめとする、近年No.I.D.が絡んできた作品と共通する、アトモスフェリックでメロディアスな部分とDNAまで染み込んだヒップホップ・ビート。ドレイクやキッド・カディのようなアンビエンスやダークな部分は抑え目にして、わかりやすさに徹しているところも良い。その時々に時代を敏感に読み取りながら、自分の中に取り入れてきたコモンらしい傑作と言えるだろう。ゲストには公民権運動に深く関わった女流作家・詩人のマヤ・アンジェロウ、G.O.O.D.の元レーベルメイトのジョン・レジェンドらが参加。アンダードッグスのメンバーのジェイムス・フォントルロイIIやリアーナのヴォーカルプロデュース等を手がけたマケバ・リディックという、ジェイ・Zのロックネイションと契約しているシンガーがヴォーカルで作品を引き締めている。