「真のノルウェー」派のひとり
モンラード・ヨハンセンの室内楽作品集
グリーグ後のノルウェーで「偉大なるエドヴァルド」とは異なる音楽語法と表現をとりながら「真のノルウェー」を示す、独自の道を探った作曲家のひとり、モンラード・ヨハンセンの室内楽作品。
作曲家アルフ・フールムからドビュッシーとラヴェルの音楽を教えられた翌年、1913年の冬から秋にかけて作曲された3楽章のヴァイオリン・ソナタは、アレグロ・クワジ・アンダンテの音楽に、彼が生まれ育ったノルランドへの想いが反映されていると言われます。アメリカ原住民のモホーク族の戦士ハイアワサを題材にしたフルダ・ガルボルグ抒情劇『大いなる平和』のための付随音楽は、「インディアンの愛の歌」「インディアン戦士の行進」「太陽の歌」の副題をもつ3曲をはじめとする5つの前奏曲から構成された作品です。モンラード・ヨハンセンが、第二次世界大戦後、ドイツの占領に協力したクヴィスリングの国民連合の党員だったことから、収容所で「贖罪の日々」を送っていたころ、ヘンデルやバッハやベートーヴェンの音楽と音楽理論の研究に没頭するかたわら作曲した『ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラとチェロのための四重奏曲』はアレグロ・ヴィヴァーチェ、アンダンテ・ソステヌート、プレスト・ノン・トロッポ、ヴィヴァーチェの4楽章。二十世紀ノルウェーの室内楽作品の「隠れた宝石」ともみなされている作品です。『フルート、2つのヴァイオリン、ヴィオラとチェロのための五重奏曲』は、彼がかつて設立に尽力し初代事務局長を務めたノルウェー作曲家協会の50周年記念の作品です。グラーヴェ、アレグレット・スケルツァンド−ヴィヴァーチェ、「パッサカリア」によるラルゴ。このあと弦楽四重奏曲で作曲家人生に終止符を打つことになる彼が、さらに深い音楽表現の追求を止めなかったことを示す作品です。
フラガリア・ヴェスカは、2006年、トール・ヨハン・ボーエンが中心となって結成されました。バロックから現代まで、さまざまな時代と様式の作品を「当時の様式」に沿った楽器で演奏、作品によって楽器編成を変えるスタイルのアンサンブルです。オーストラリアのレイナー、フランスのロワイエとブローネ、ノルウェーのヘッセルベルグ・ローケン。ピアノの吉田早苗は、バラット=ドゥーエ音楽学校でイジー・フリンカ、スタヴァンゲル大学でホーコン・アウストボーに師事。ソリスト、室内楽奏者、伴奏者としての経験を積みました。
録音セッションは、響きの良さで知られるオスロのソフィエンベルグ教会で行われ、ベテランのアクセルベルグがエンジニアリングを担当しました。ノルウェー国立図書館所蔵の手稿譜による『大いなる平和』の音楽と、ボーエンが作曲者のスケッチを参照しながら校訂、編集した『ピアノ四重奏曲』は初録音です。(輸入元情報)
【収録情報】
ヨハンセン:
● ピアノ四重奏曲ハ長調 Op.26 (1947-48)
● ヴァイオリン・ソナタ Op.3 (1913)
● 『大いなる平和』への劇付随音楽 (1925) (2つのヴァイオリン、チェロとピアノのための)
第1幕への前奏曲
第2幕への前奏曲『インディアンの愛の歌』
第3幕への前奏曲『インディアン戦士の行進』
第4幕への前奏曲
第5幕への前奏曲『太陽の歌』
● フルート五重奏曲 Op.35 (1967)
フラガリア・ヴェスカ
トール・ヨハン・ボーエン(ヴァイオリン)
アリソン・レイナー(ヴァイオリン)
ベネディクト・ロワイエ(ヴィオラ)
オレリエンヌ・ブローネ(チェロ)
セシーリエ・ヘッセルベルグ・ローケン(フルート)
吉田早苗(ピアノ)
録音時期:2015年7月17,18,27-30日
録音場所:オスロ、ソフィエンベルグ教会
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)