プロフィルから出ているムラヴィンスキー・エディション。
その4枚目にあたるCDです。
この巻では今まで以上に珍しい音源や作品も多く、ムラヴィンスキーのファンは元より、ロシア音楽ファン必見のBOXとなっています。
CDはクラムシェル・ボックス仕様で、CDはペラペラの薄い紙に入っています。
このペラペラの紙入りのだとちょっと残念に思うので、個人的には厚紙タイプにしてもらいたかった。
ブックレットはありますが、指揮者について僅かにのってるだけで、後は収録曲目のみ。
以下、簡単に感想を書きます。
尚、記載がなければ、レニングラード・フィルハーモニー交響楽団の演奏です。
CD1→ベートーヴェンの交響曲第2番、第4番を収録。
2番はソヴィエト国立交響楽団との録音で1940年とムラヴィンスキーの録音歴では初期になる物。
後年の緊張感ある演奏に比べてややぬるさもあるが、なかなかの演奏。
4番は1955年、レニングラード・フィルとの録音で、勢いに乗ったこのコンビのメリハリある演奏は名演と言って良いだろう。
CD 2→続いてベートーヴェンの交響曲第3番と交響曲第5番を収録。
第3番は1961年にベルゲンで録音されたライブ。
音は良くないが演奏は全盛期のこのコンビの凄さが分かる名演。
第5番は1949年のスタジオ録音で、1楽章は早めの引き締まったテンポで中々だが、全体では普通だろうか。
CD 3→ベートーヴェンの交響曲第6番と第7番を収録。
このボックスの中で収録された
ベートーヴェンで普通に感じてしまうが、どちらも単独で聴いたら中々凄い演奏である。
7番はガッシリとした構成、落ち着いたテンポだが、エネルギッシュで素晴らしい。
CD 4→ロシアの作曲家の管弦楽小品集。
高速ルスランなどムラヴィンスキーお得意のレパートリーと、凶暴なブラスによるソヴィエトならではの演奏は聴いていて楽しい。
CD 5→ショスタコーヴィチの交響曲第11番と祝典序曲、ウストヴォリスカヤの子供の組曲を収録。
交響曲はレニングラード初演時のライヴ。
この曲の屈指の演奏といっても良く、3楽章や4楽章での凶暴な演奏は凄い。
最後の鐘が鳴り響く所の表現はこのコンビにしか出来ないだろう。
祝典序曲は2回しか演奏会で取り上げなかったという珍しい録音だが、速めのテンポと統制の取れたアンサンブルは名演と言って良い。
ウストヴォリスカヤはソヴィエトの現代音楽の作曲家で特異な編成の曲で知られるがここでは、聴きやすい部類に入る曲。
最近ブリリアントから出たウストヴォリスカヤの聴きやすい作品を集めたアルバム(BRL96084)にも入ってる音源と同一だが、録音年が違っており、どちらが正しいかは不明。
演奏もオケの高い技術力で何とかなってるがあまり面白いとは言えない。
CD 6→ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番とクリュズネルのヴァイオリン協奏曲を収録。
ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルの抜かりなさは協奏曲でもそうだが、それに次いていけるソリストも凄い。
オイストラフとのショスタコは名演。
CD 7→シューベルトの未完成交響曲はソヴィエト国立交響楽団とのライブ。
意外というとあれだが繊細な演奏で新鮮。
バルトークの弦楽器、打楽器とチェレスタの音楽は、レニングラード・フィルの各セクションの凄さがわかる演奏。
CD 8→シベリウスの交響曲第3番とトゥオネラの白鳥、グラズノフの交響曲第4番とライモンダを収録。
この中ではシベリウスの3番が大変充実した内容。
CD 9→ここから民族色の強い作曲家を収録。
ハチャトゥリアンのピアノ協奏曲は、レフ・オボーリンのピアノ、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団と共演したもの。
同曲の録音の中ではもっと良い演奏もあるがこれも悪くない。
交響曲第3番はレニングラード初演時の貴重なもの。
ブラスの凶暴さや熱の入った演奏はソ連のライブという事あってか、なかなか良い。
アルチュニアンの祝典序曲は濃厚なアルメニアの香りがする、隠れた佳作。
ここに収録されているのは世界初演時の音源で、ヴェネチアからもでていたが、音はヴェネツィア盤が良い。
CD10→ババジャニアンのヴァイオリン協奏曲は初出らしく作品自体も珍しいもの。
民族色豊かな濃厚な作品を、コーガンという優秀なヴァイオリニストのヴァイオリンで弾いており同曲の唯一の録音ながらスタンダードにもなる名演。
余白にはボーナスとして幾つかの小品が収録されていますが、ソヴィエト国立交響楽団と共演した幻想交響曲がいい。
得意のロシア音楽から、非ロシア系まで多種多様な作品を収録したこのボックスは大変価値のある内容です。
収録曲に少しでも興味があればお勧めです。