あくまでも典雅な名曲、素晴らしい名演奏、素晴らしい楽器、素晴らしい録音。4拍子揃った、全く聞き飽きないCDです。

慈しむ様に丁寧に演奏された旋律に、華やかな装飾音が散りばめられている。それに、適度な、現代的な、スピード感とダイナミズムが加味されている。これはけだし名演である。中野振一郎氏の本領発揮である。この素晴らしい響きを支えているのがチェンバロの名器であり名録音である。このCDに続く「デュフリII」では、さらに、奔放さが加わっている。この２つのCDは何度聞いても飽きることがない。

デュフリの名盤は少ない。レオンハルトやインマゼールの選集もあったが、デュフリで固めた録音は多くはない。本盤は選曲の上でも気の効いた一枚。例えば、デリクールは素敵な曲ながら滅多に演奏されない。本日、古楽研究会で彼女の演奏を生で聴いた。曽根に対抗できる優秀な若手だと思った。クセがなく、素直な表現。本盤でも繊細さが微笑ましい。コクというか、味わい深さが欲しい面もあるが、全体にバランスよい仕上がり。今後の彼女にも期待したい。思い切ってデュフリをデビュー盤とした勇気を合わせて高評価とさせていただく。