Bernard Foccroulleの最新録音。Foccroulleの重要なレパートリーであるJ.S.Bach以前のオルガン音楽であり、今回はH.Scheidemannと同世代でScheidemann同様オランダのSweelinckに学び、その後ドイツの地でドイツオルガン音楽発展の基礎を築いた二人のオルガニスト、Jacob PraetoriusとMelchior Schildtの作品集です。自分は恥ずかしながら、どちらの作曲家もこのCDに接するまでは未聴であり、本CDのFoccroulleのライナーで教えてもらった知識が全てなのですが、いずれの作曲家もScheidemann同様Sweelinck譲りの堅固な構成と、華やかさよりあくまでテキスト(聖歌)内容を表現することのみに注視した作曲姿勢という点で、Bachに至るドイツオルガン音楽の紛れも無い先達であることがよく理解されます。楽曲の自由度や幅の面では前記Scheidemannに一歩譲るかも知れませんが、 PraetoriusのVon unser in Himmelreich、SchildtのHerr Christ, der einig Gottessohnなどのコラール変奏曲において、地味ながらかけがえのないしみじみとした音楽です。Bernard Foccroulleの、曲の構造と背景、および楽器を知り尽くした明晰きわまりない演奏は、もはや他に比較するもののないレベルですが、加えてこの人でなければ出せない滋味が(少し前のFrescobaldiでも感じましたが)、最近聴けば聴くほど味わい深く感じられるようになってきています。目立たないCDですが、古楽愛好家にお薦めする価値の十分にある良演盤と思います。