ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番、モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 エフゲニー・スドビン、オスモ・ヴァンスカ&ミネソタ管弦楽団
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ココパナ | 北海道 | 不明 | 2021年07月06日
モーツァルトのピアノ協奏曲第24番を聴いたベートーヴェンは深い感銘を受けた。その影響がもっとも端的に顕れているのが、ピアノ協奏曲第3番である。ともにハ短調という情熱的な調性を持つ2曲。なので、当アルバムの組み合わせは、蓋然性が高い。だが、このアルバムで、私が最も心を動かされたのは、その構成感ではなく、モーツァルトのピアノ協奏曲第24番の第1楽章のカデンツァである。それは、スドビン自身によって書かれたもの。すさまじいパワーを持っている劇的なカデンツァだ。壮大な旋律のふくらみ、蓄えられたエネルギーの放出。ヴィルトゥオジティに満ち溢れ、ロマン派の薫りを放ちながらも、その連結点において、みごとにモーツァルトの音楽に繋がる。そもそも、この楽曲は、モーツァルトのピアノ協奏曲の中で、もっともダイナミックなものだろう。だからこそ、スドビンの豪快なカデンツァであっても、見事に収まるのだ。そして、そのベートーヴェンが同じハ短調で書いたピアノ協奏曲がこの第3番。先述の通り、両曲の冒頭が似ているのは偶然ではない。スドビンはベートーヴェンにおいても、とてもスリリングなピアノを示す。スコア通りに弾いているのだが、鮮烈なイントネーションの効果を操り、劇的な濃淡を描き出す。それにしてもスドビンのテクニックは凄い。普通は、ここまで情動の激しい表現を行うと、細かい歩調が乱れたり、前後の脈絡が乏しい突飛さが現れたりするのだけれど、スドビンの演奏にはそのような要素を感じない。テンポを速める瞬間であっても、スラーで奏でられる音階の整いは、見事に保持されている。細部がしっかしりしているから、全体の流れも一つの表現として完成度が高まり、協奏曲という大規模な音楽の形式的な美観も損なうことがない。ヴァンスカ指揮のミネソタ管弦楽団も、スドビンのピアノに引っ張られるかのようにして、非常に熱のある演奏を繰り広げる。ベートーヴェンの協奏曲の終結部で奏でられるティンパニの鮮烈な連打音にその特徴はよく表れているだろう。0人の方が、このレビューに「共感」しています。
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