Vijay Iyer

CD Mutations

Mutations

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    hiro  |  愛知県  |  不明  |  2014年03月31日

    Vijay Iyerは、1971年ニューヨーク生まれのインド系アメリカ人。今年初頭にハーバード大学の音楽教授に就任したとのこと。 トリオ作品「Historicity (2009年)」が、 Grammy賞のBest Instrumental JazzAlbumにノミネートされました。その後も、ACTレーベルからコンスタントに作品を発表。先進的なミュージシャンとして知名度を上げてきました。 今回は、ECMから、Manfred Eicherのプロデュースにより、String quartetを従えての「Mutations (2014年)」をリリース。 ECMの作品には、冒頭に5秒ほどの沈黙(silence)が置かれているのですが、本作も、沈黙がどこまでも続くと思うほど密やかに始まります。 1曲目のピアノソロは、明確なテーマもなく、ほぼ即興的に展開していくのですが、7分以上という長さを感じさせないのは、 Iyerの演奏能力の高さを証明するものだと思います。2曲目は、ピアノとエレクトロニクスの多重録音か?いい感じになったところで終わってしまうのが残念。 3曲目からは、String quartetが加わった「Mutation」という組曲が10のパートに分かれて演奏されます。 「Mutation」とは、「変異、転換」というほどの意味でしょうか?それぞれに「Air」「Rise」「Canon」「Chain」などといったサブタイトルがつけられています。 「Air」はSteve Reich的なミニマリズムを感じる曲で、ストリングスが割と心地よく流れていきます。 「Rise」はタイトル通り、ストリングスが上昇していきますが、快感というよりアバンギャルドな印象を受けます。 続く「Canon」は、ピアノとストリングスが互いの距離を測りながら、時に交わり、時に離れつつ進んでいくような曲。ほど良い緊迫感もあります。 両者は最後まで交わらないまま、その距離は「Chain」にも引き継がれ、一定のリズムを反復するストリングスに、ピアノは着かず離れずの位置を守っています。これは、前衛的なタンゴのようにも聴こえる曲。 「Automata」は、正に現代音楽の世界。自由に舞うストリングスが抽象絵画を描くかのように響きます。そして、どこからか異音が。エレクトロニクス音でしょうか? 「Waves」は、繊細なストリングスを背景に、ピアノがキラキラと輝くように始まり、ホッとさせてくれますが、次第に暗い森の奥に迷い込んでしまったような不安な心持ちにさせられる曲。 続く「Kernel」で、リスナーは更に森の奥へと誘い込まれます。曲の後半でピアノが強いパッセージを送りだすとストリングスもそれに答えていきます。アバンギャルドな展開はどこまで続くのでしょうか? 「Descent」は、ストリングスがグイグイと前進していく曲。私くらいの歳のオジサンは、伊福部 昭の「ゴジラのテーマ」を想起してしまいます。 「Time」は、この組曲のエピローグで、静かなピアノソロに、弦楽器の胴を叩くような音が添えられます。 ラスト13曲目の「When We‘re Gone」もスローなピアノソロ。最終部でスケールを感じさせる展開に。 この「Mutations」は、Eicher、そして熟達したファンからすれば、 ECM本シリーズからリリースされて違和感ないのかもしれませんが、ジャズとは言えない作品ですし、ECM を聴きなれた方でも距離を置いてしまうかもしれません。 しかし、全体を通して、 EicherがIyerのクセを封じ込め、彼のアカデミックな部分をうまく掬い上げたという印象を強く抱きます。

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