無言歌集、厳格な変奏曲、ロンド・カプリチオーソ、他 ペリアネス
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ココパナ | 北海道 | 不明 | 2021年07月06日
ペリアネスというピアニストは、「無常観」や「寂寥感」といった情感を引き出すのが巧い。枯淡の響き、とでも言おうか。独特の存在感のあるピアニストである。このメンデルスゾーンでも、特有の気配を持った音楽が息づいている。メンデルスゾーンの無言歌は、技巧的には簡単で、メロディーも美しいので、初学者にも愛好して弾かれる音楽だし、全般にそのたたずまいも可愛らしい。全集としてはバレンボイムやプロッセダのものがあるが、彼らの演奏は、概してテンポが早く、模範的ではある一方で、私には薄味に感じるところもある。他方で、選集ではあるが、シフやペライアは、少しテンポを落して、抒情性を味わわせてくれた。ペリアネスの演奏は、そのどちらでもない。音楽そのものを昇華させ、作品自体のステイタスをより高貴なものに移したような印象を受ける。透明な音で、決して急ぐことはないが、かといって旋律に豊かな肉付きを施すわけでもない。ルバート奏法で健やかな情感を巡らせながらも、感情を表面だたせることなく、たたずまいを崩すことがない。ロマンティックな音楽からも、不思議な悲しい色を持った陰りが顔をのぞかせる。「デュエット」や「海辺で」における弾きこなしなど、美と鬱の切っても切れない関係が感じられる音楽で、かつてないほどにこれらの曲に「深み」を感じさせてくれる。「ヴェネツィアの舟歌」や「そよ風」の格調の高さにも注目したい。一方で、「ロンド・カプリチオーソ」「6つの前奏曲とフーガ 第1番」「厳格な変奏曲」といった作品では、強く鋭角的な音を積極的に用い、きわめて厳しい諸相を表出させている。これらの楽曲には、メンデルスゾーンのロマン派の香を持った楽想と、バッハ、ベートーヴェンら先人たちへの畏敬がないまぜとなった雰囲気があるのだが、ペリアネスの解釈には、どこか悲劇的なソノリティを秘めた壮絶さがある。ペリアネスの才気を、認識させてくれる。0人の方が、このレビューに「共感」しています。
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