パーヴォ・ヤルヴィ&N響/R.シュトラウス:アルプス交響曲、他
2025年03月19日 (水) 20:00 - HMV&BOOKS online - クラシック

パーヴォ・ヤルヴィとN響が精緻かつ豪胆に描くアルプスの1日
パーヴォ・ヤルヴィがNHK交響楽団首席指揮者としてのプログラミングと録音プロジェクトの中心に置いてきたR.シュトラウスのオーケストラ曲。これまで『英雄の生涯』に始まる7曲を3枚のディスクに刻みこんできましたが、いよいよその完結編となる『アルプス交響曲』の登場です。
ヤルヴィによるこの交響曲の演奏は、コロナ禍のため当初の予定から2度延期されました。そしてヤルヴィの首席指揮者退任後、名誉指揮者として初めてN響に登場した2023年4月の定期公演でようやく披露され、その機会にライヴ収録されました。
外見的には「夜が明け、登山を始め、山のさまざまな景観を眺めつつ頂上に到達下山の途中に嵐に会うも難を逃れ夕暮れに」という1日の行程が描かれ、登山の楽しい気分、湧き出る泉の水しぶき、頂上の遠大な光景、嵐などが大編成のオーケストラの色彩豊かな無限の音色のパレットを用いて音楽で見事に描写されています。そして、実のところは具体的な描写の背景にある大自然への畏怖・共感と諦観の心情がにじみ出たエモーショナルな音楽です。
カップリングの『ヨゼフ伝説』交響的断章は、もともとディアギレフ率いるロシア・バレエ団のために書いた同名のバレエ音楽からシュトラウス自身が1947年に編んだ演奏会用の組曲です。
パーヴォ・ヤルヴィにとっても、NHK交響楽団にとっても、これら2曲は初録音となります。
【日本発の『アルプス交響曲』 パーヴォ・ヤルヴィ】
『アルプス交響曲』という作品は人生のメタファーであり、高みに到達することを希求する私たちひとりひとりの様相を象徴的に描いています。だからこの作品における「山」とは、アルプスや富士山のような実在する山と結びつけなくてもいいのです。「山」はむしろ、私たちが日々生きている人生の諸相の象徴なのです。
私は、NHK交響楽団との『アルプス交響曲』を世に出すにあたって、それに相応しいパッケージのイメージにするべきだと考えていました。この作品のディスクのジャケットによく使われる雪に覆われたスイス・マッターホルンのイメージではなく、もっと日本発の演奏であることをはっきりと示すことのできるものを、と。日本を代表する山と言えば富士山。私は実際に富士山に登ったことはありませんが、雲間に浮かび上がるその神秘的な威容を飛行機から目にしたり、新幹線の車窓から眺めたり、あるいは箱根の温泉を訪れた際にはごく間近に目にすることができました。
古くから様々な形で描かれてきた富士山のイメージの中で、江戸時代の葛飾北斎による「冨嶽三十六景」は日本以外にもよく知られています。その中で富士山を大きく描いた2つの版画のうち、「凱風快晴(がいふうかいせい)」(通称「赤富士」)と並び、私の印象に強く残っているのが「山下白雨(さんかはくう)」(通称「黒富士」)です。この「黒富士」をジャケットに使うことにしたのです。
この版画には、一つの画面の中に、輝かしく晴れ渡った山頂、入道雲がもくもくと立ち込める山の中腹、そして稲妻が光る山麓の光景が同時に描かれています。これはいわば『アルプス交響曲』]が描く情景そのものです。私にとって興味深いのは、北斎とシュトラウスの描写手法の差異。例えば北斎は、稲妻が光り激しい雨が降っている山麓を黒みの強い茶地にジグザクに描かれた稲光で暗示するのに対し、シュトラウスは「雷雨と嵐 下り坂」でウィンドマシンを含む打楽器を総動員し、オルガンも加えて激しい嵐の様子を実に克明に描写しています。日本とドイツ、ほぼ80年という空間と年月を隔て、木版画とオーケストラという異なる表現主題を用いて、二人の芸術家が描き出した大自然の光景。私は、むしろそこに差異よりも、優れた芸術作品ならではの相通じるイメージを感じるのです。(メーカー資料より)

リヒャルト・シュトラウス:
● アルプス交響曲 Op.64
01. 夜
02. 日の出
03. 登山
04. 森にはいる
05. 小川に沿って進む
06. 滝
07. 幻影
08. お花畑
09. 山の牧歌
10. 林で道に迷う
11. 氷河へ
12. 危険な瞬間
13. 頂上にて
14. 見えるもの
15. 霧が湧いてくる
16. 太陽がかげりはじめる
17. 悲歌
18. 嵐の前の静けさ
19. 雷雨と嵐、下山
20. 日没
21. エピローグ
22. 夜
● 『ヨゼフ伝説』交響的断章 AV148, TrV231a
NHK交響楽団
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
録音時期:2023年4月15,16日(NHK交響楽団第1980回 定期公演 Aプログラム)
録音場所:東京、NHKホール
録音方式:ステレオ(DSD/ライヴ)
SACD Hybrid
CD STEREO/ SACD STEREO
解説:パーヴォ・ヤルヴィ、広瀬大介、N響による演奏記録
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