マタイ受難曲

礒山雅

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784487791002
ISBN 10 : 4487791006
フォーマット
出版社
発行年月
1994年10月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
20cm,491,57p

商品説明

礒山雅/マタイ受難曲

イエスに寄せるいたましい思い,内なる罪への悔悛――人間の永遠のテーマ,罪,死,新生に対してバッハが込めた思いを,一曲一曲,音楽の襞へと分け入り分析する。

■著者情報

[ 礒山 雅 ]
1946年東京に生まれ,長野県で育つ。松本深志高校卒業後,東京大学文学部で,美学芸術学を専攻。同大学院を経て,1977年より国立音楽大学に勤務,現在,同大学教授。専攻は音楽美学・西洋音楽史,とりわけバッハの研究。1988年から「毎日新聞」に音楽批評を執筆,また大阪いずみホール音楽ディレクターとしてコンサート運営にもかかわる。2006年から,日本音楽学会会長。
著作に『バッハ=魂のエヴァンゲリスト』(東京書籍,第1回辻荘一賞),『バロック音楽』(NHKブックス),『J.S.バッハ』(講談社現代新書),『マタイ受難曲』(東京書籍,第9回京都音楽賞研究評論部門賞),『モーツァルト/二つの顔』(講談社選書メチエ),『バッハ《満ち足りたプライセの町》BWV216 オリジナル・パート譜ファクシミリ版』(東京書籍),『モーツァルト=翼を得た時間』『バロック音楽名曲鑑賞事典』(以上,講談社学術文庫),『バッハ・カンタータの森を歩む1,2』(東京書籍),主要訳書にC.ヴォルフ/T.コープマン編『バッハ=カンタータの世界』全3巻(監訳,東京書籍),N.ザスラウ『モーツァルトのシンフォニー』(監訳,東京書籍)等がある。

■内容

はじめに

序論

第I章 受難と受難曲の歴史――バッハまで
 受難と十字架
 イエスの活動と死
 福音書の受難記事
 四つの福音書
 朗誦される受難記事
 多声化の始まり
 ルネサンスの応唱風受難曲
 ルネサンスの通作受難曲
 宗教改革初期のルター派受難曲
 応唱風受難曲のバロックにおける発展
 オラトリオ受難曲の成立と発展
 一八世紀初めのライプツィヒにおける受難曲

第II章 《マタイ受難曲》の資料と作曲年代
 バッハの《マルコ受難曲》
 《ルカ受難曲》をめぐって
 《ヴァイマル受難曲》
 《ヨハネ受難曲》の変遷
 《マタイ受難曲》の資料――自筆総譜
 オリジナル・パート編
 初稿を伝える『アルトニコル筆写譜』
 《マタイ受難曲》の作曲年代――修正された通説
 リフキンの新説
 初演時の《マタイ受難曲》
 《ケーテン候のための追悼音楽》との関係

第V章 ピカンダーによる自由詩
 ピカンダーの役割
 二つのキャラクター
 歌詞の構成
 詩人ピカンダー
 ピカンダーの評価

第IV章 歌詞のルーツを探って
 自由詩の背後にあるもの
 ルター派神学とバッハ
 八一冊の神学書コレクション
 蔵書を開いて
 コレクションの内容
 ミュラーとランバッハ
 蔵書研究の問題点

第V章 受け継がれるコラールの伝統
 聴き手に訴えるコラール
 コラールの誕生
 《マタイ受難曲》におけるコラール
 ゲールハルトの受難コラール
 和声化されるコラール

本論

第I章 花婿が、子羊のように―冒頭合唱曲の世界 〈第1曲〉
 大胆な導入
 花婿のたとえ
 雅歌のメッセージ
 子羊の婚姻
 コラール
 導入部の分析
 応答する合唱楽節

第II章 受難の預言 〈第2曲―第4曲b〉
 聖書場面の始まり
 通奏低音と「光背」
 コラールの介入
 祭司たちの謀略

第V章 香油を注ぐ女 〈第4曲c―第6曲〉
 ベタニアにて
 香油を注いだのは誰か
 マグダラのマリア
 もう一人のマリア
 福音書記者の調和
 バッハの聖書場面
 注がれる涙
 愛ゆえに
 目に見える歌詞の表現
 感情を扱うやさしさ
 ダ・カーポ・アリア

第IV章 血を流すイエスの心 〈第7曲―第8曲〉
 密告者の出現
 血を流すのは誰か
 母なるイエス
 痛ましさの表現
 ロ短調の使用
 いくつかの演奏

第V章 最後の晩餐 〈第9曲―第13曲〉
 過越祭の喜び
 裏切りの告知
 ラビよ、私ですか?
 パンとぶどう酒の意味するもの
 涙の海で味わう喜び
 神学論争に代わるアリア

第VI章 オリーブ山にて 〈第14曲―第17曲〉
 バッハはイエスの十字架?
 復活の預言
 受難コラールの介入
 ホ長調の役割
 つまづきの預言
 受難コラールの再現

第Z章 ゲツセマネの園の苦悩 〈第18曲―第25曲〉
 悲しみの始まり
 雷の子らの野心
 痛ましいおののき
 イエスのもとでの目覚め
 ヤコブのはしご
 ひれ伏し、祈るイエス
 苦い杯
 眠る弟子たち

第[章 捕縛 〈第26曲―第29曲〉
 ユダの接吻
 ヨハネ福音書の対応箇所
 二重唱に合唱が加わって
 このタイミングでこそ
 争わぬイエス
 大コラール楽曲の導入
 整然とした構成
 復活を見据えて

第IX章 イエスを探す美女 〈第30曲―第37曲〉
 対話する美女たち
 疑問文がアリアに
 大祭司邸での審問
 苦しい証言
 沈黙するイエス
 四音符の表現力
 引き出された涜神の言葉

第X章 明暗を分けた悔い改め 〈第38章―第42章〉
 〔その一〕 ペトロの否認
 浮かび上がるペトロの姿
 三つの応答
 良心を目覚めさせる鶏鳴
 まなざしの溶かす涙
 アリアへの視点
 隠された受難コラール
 コラールによる意味づけ
 〔その二〕 ユダの自殺
 後悔するユダ
 明るいアリアの侵入
 「私」とは誰か
 放蕩息子としてのユダ解釈
 ユダの復権
 ランバッハのユダ論

第XI章 流れ下る愛 〈第43曲―第49曲〉
 「心臓部」の仮説
 血の畑の由来
 王の称号をめぐる対話
 受難コラールのヴァリエーション
 バラバを!
 驚くべき刑罰
 良き行いの数々
 清らかな愛
 愛の表象のルーツ
 愛とは何か

第XII章 血にまみれた十字架 〈第50曲―第58曲〉
 血の報復
 鞭打ち
 内面化される鞭打ち
 着想の源泉
 ユダヤ人の王様
 血と傷にまみれた御頭
 十字架の道行
 甘美なる十字架
 ゴルゴタへ
 私は神の子だ

第XIII章 イエスの死 〈第59曲―第63曲b〉
 鳴り響く弔鐘
 手を広げるイエス
 覆う暗闇
 消えた光背
 詩篇の引用?
 ルター正統派の立場
 なぜ対訳か
 追悼のコラール
 地震の描き方
 地震の数象徴
 神の子の認識
 浮かび上がる十字架
 I・N・R・Iの銘
 天変地異の語ること
 ランバッハの天変地異論

第XIV章 おのが心への埋葬 〈第63曲c―第68曲〉
 たたずむ女性たち
 夕暮れ、涼しい時
 そよぐオリーブの葉
 おのが心を墓として
 キリスト哀悼の情景
 悩める良心の憩い

補章 レコード/CDによる演奏の歴史
1 ハンス・ヴァイスバッハ指揮 ライプツィヒ放送交響楽団(一九三五年)
2 ウィレム・メンゲルベルク指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(一九三九年)
3 ギュンター・ラミーン指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(一九四一年)
4 レジナルド・ジェイクス指揮 ジェイクス管弦楽団(一九四九年)
5 ヘルマン・シェルヘン指揮 管弦楽団(一九五〇年)
6 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(一九五四年)
7 カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団(一九五八年)
8 フリッツ・ヴェルナー指揮 プフォルツハイム室内管弦楽団(一九五九年)
9 オットー・クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団(一九六一年)
10 レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック(一九六三年)
11 カール・ミュンヒンガー指揮 シュトゥットガルト室内管弦楽団(一九六四年)
12 オイゲン・ヨッフム指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(一九六五年)
13 ハンス・スワロフスキー指揮 ウィーン国立管弦楽団(一九六〇年代)
14 モーゲンス・ヴェルディケ指揮ウィーン国立歌劇場管弦楽団(一九六八年)
15 ヴォルフガング・ゲネンヴァイン指揮 コンソルティウム・ムジクム(一九六八年)
16 カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団(一九六九年)
17 クラウディオ・アッバード指揮 イタリア放送ミラノ交響楽団(一九六九年)
18 ハンス・マルクス・ゲッチェ指揮 ハイデルベルク室内管弦楽団(一九七〇年)
19 ルードルフ・マウエルスベルガー指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(一九七〇年)
20 ニコラウス・アーノンクール指揮 ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(一九七〇年頃)
21 カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団(一九七一年)
22 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(一九七二、七三年)
23 ヘルムート・リリング指揮 シュトゥットガルト・バッハ・コレギウム(一九七八年)
24 サー・ディヴィッド・ウィルコックス指揮 テムズ室内管弦楽団(一九七八年)
25 カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団(一九七九年)
26 ミシェル・コルボ指揮 ローザンヌ室内管弦楽団(一九八二年)
27 レイモン・レッパード指揮 北ドイツ放送交響楽団(一九八三年)
28 ペーター・シュライヤー指揮 ドレスデン・シュターツカペレ(一九八四年)
29 フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮 シャペル・ロワイヤル(一九八四年)
30 ニコラウス・アーノンクール指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(一九八五年)
31 濱田徳昭指揮 バッハ・コレギウム東京(一九八五年)
32 ゲオルク・ショルティ指揮 シカゴ交響楽団(一九八八年)
33 ジョン・エリオット・ガーディナー指揮 イングリッシュ・バロック・ソロイスツ(一九八八年)
34 グスタフ・レオンハルト指揮 ラ・プティト・バンド(一九八九年)
35 エーノホ・ツー・グッテンベルク指揮 ミュンヘン・バッハ・コレギウム(一九九〇年)
36 トン・コープマン指揮 アムステルダム・バロック管弦楽団(一九九二年)
37 クリストフ・シュペーリング指揮 新管弦楽団
【付記】

あとがき

バッハの神学蔵書一覧
《マタイ受難曲》パート譜一覧
《マタイ受難曲》の数象徴に関するマルティーン・ヤンゼンの説
バッハ以前の主な《マタイ受難曲》
文献目録
人名索引
《マタイ受難曲》対訳


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  • べすたん さん

    バッハのマタイは人類の至宝の一つといわれいます。その楽曲の製作過程や歌詞の出来ていく過程などが詳しく書かれていて、これからもこの曲を聴く時、必ず思い出すと思われます。これからも、手元に置いておく本の一つとなりました。これ読むのに2週間も掛かってしまったけど、それくらいの時間は必要なのかも。

  • かふ さん

    何年か前に、クリスマスにETVでバッハ『マタイ受難曲』の(鈴木雅明指揮)演奏を見て以来、ここ数年バッハ『マタイ受難曲』(フィリップ・へヴァレへ指揮)の演奏アルバムを聴いていたが、輸入盤ということもあって内容はよくわかっていなかった。それで解説本が出ていると知って読んでみた。以下、https://note.com/aoyadokari/n/ncfae85c18c96

  • どら猫さとっち さん

    これを読み始めた頃、バッハ・コレギウム・ジャパンで、マタイ受難曲を聴きに行く機会があったので、参考に読んだ一冊。著者はNHKFM「古楽の楽しみ」の案内役のひとりで、さまざまな角度から古楽の解説をして、その世界の面白さ、奥深さを教えてくれた。本書は、バッハの大作を翻訳しつつ、解説も詳しく施される。残念ながら、今は亡くなった。僕は、著者によって古楽の世界を切り拓いたといえる。彼のバッハやそれ以前と以降の作曲家の研究をし続けた業績は、大きく賞賛するに値するといってもいい。

  • marimo さん

    ★★★ 演奏に際して。何から何まで本当に勉強になった!バッハの音楽の「数」と神性については正直こじつけじゃねえのかと思ってしまうニワカですが、同時に感嘆せずにはいられないわけです。

  • Y.Yokota さん

    「––私がドイツで行った蔵書研究の最大のポイントは、じつはここにあった。」神学者のミュラーやランバッハ、音楽家のマッテゾンらの引用とともに、著者独自の視点でバッハの聖書観を明らかにしようとする姿勢が胸に迫る研究書。数字や音形などに込められたメッセージ、楽器や調が与える効果なども1曲1曲こと細かに分析している。口語訳詞などの付録も大変充実している。補章のディスクガイドでは殊の外辛辣で、ある演奏に対しては「見当外れ」「笑えてしまう」なんて言葉も。リヒター'58しか聴いていないので次はレオンハルトでも聴こう。

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人物・団体紹介

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礒山雅

1946‐2018年。音楽学者。東京大学文学部および、同大学院修士・博士課程で、美学藝術学を学ぶ。学術博士(国際基督教大学)。国立音楽大学教授を経て、同音楽研究所所長、2006年日本音楽学会会長、サントリー芸術財団理事、いずみホール音楽ディレクターなどを歴任。1988年バッハの研究により辻荘一賞受賞

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