Grace & Mercy

1961年ケープ ･ タウン生まれ、ジャズ、R&B、ソウルを股にかけ、活躍するジョナサン ･ バトラーの最新作品。
ジョナサン･バトラーと言えば、80年代以降のスムースなギター･サウンドが何と言っても有名。BMG傘下のJiveと契約し、リリースされた諸作品は、耳触りの良さで、その筋のファンを捉え、人気も根強いものがあります。しかし、間違いなくジョナサンの核にあるのは、ゴスペルの心。61年に南アフリカに生を受けたことが示す通り、育った環
境ではアパルトヘイトによる差別の現実に大きく苦しんだ経験を持つジョナサンは、真っ向からでないものの、反体制の音楽も演奏したアーティスト。その後、白人地区で演奏した初の黒人アーティストともなり、カナダ、イギリス、そしてアメリカへと、活動の域を移していくのも事実ながら、核にあるのは、不幸にもタフな現実を体験せざるをえなかった者だからこその深い「祈り」、「友愛」、「感謝」の気持ち。そして、「希望を持つことの大切さ」。その点で、ジョナサンの音楽は、神様への祈りを底辺に据えたカーク ･ ウエイラムと重なるといえましょう。( 実際、共演も果たしています。)
アルバムは全11曲。今回のリリースは、ほぼすべてが、個人的な体験を通した曲だとこと。そんな中で、深い家族愛に根ざしたスピリッツにも注目。実際、30 年にも渡り、癌と闘う妻との生活をかけがえないものと感謝し、バック ･ グラウンド ･ヴォーカルには、愛娘も参加。ストリングスや、コーラスが美しい世界を添える M-5 などは特に慈しみ深い愛がこもったバラード。また、2ヴァージョンを収録する I know he Cares(M-9, 11) には、神への深い感謝と愛しみが滲む一曲と言えましょう。聴き心地よく、キャッチーなメロディ、王道なアダルト ･ コンテンポラリーのメロウ ･ アレンジに包み込まれたソウルフル･クロス･オーヴァー･ミュージック。POPでキャッチーな前半に対して、ゴスペル色が濃くなる後半へ、という構成も粋。ジョナサン曰く ｢ この作品が人々に希望をもたらすものであれば ･･･」とのこと。心地よく物思いにふける初秋に大切なものを感
じさせてくれる一枚。
メンバー：
Jonathan Butler(g, vo), Dan Luz(b=M1-3,5,8,9), Kevin Teasley(key=M1,5,6,8,p/org=M5, string arrangements=M-5,8),
Jodie Butlerand Kurt Lykes(background vocals=M1-5, 7-9), Gordon Cambell(ds=M-5,8,9), Tracey Carter(org=M7)
（メーカー資料より）