90年代ハウスシーンが好きな者としては捨て曲なしの楽しい1枚。懐かしいギミックやオマージュが複雑に、そして巧妙に数々のレイヤーに練り込まれていて、聴いているだけで目眩がするような気分になる。「Chroma」はＹＭＯの「邂逅」のような坂本龍一のエレガンスをトランシーなキラキラ・アンセムの中に感じられる不思議な曲だ。また「Hyper Seconds」では90年代の伝説と言ってもいいLA Synthesis（初期のThe Black Dogを凌駕する美麗ＩＤＭアーティスト）のような黄金のシンセリフがひらめき、「Blue Moon Tree」ではジョージ・ベンソン的なフュージョン曲のスキャットがハイパーピッチ化したりもする。このように奇想天外な展開の曲ばかりなのだが、それらをすべて90年代のニューエイジ的エッセンスで柔らかく包み込んでいるところが、ひとつLoneらしさとして一貫しているようにも思える。

AIRGLOW FIRESは紛れもない名曲ですが、それ以外の楽曲も素晴らしく全体を通して浮遊感のあるダンスミュージックで統一されています。

年代的にはEDMに影響されそうな時代にあっても、自分の個性を貫いているという印象を受けました。曲数は少ないですがクオリティーは高いです。