【コラム】Akira Kosemura第24回 細い糸に縋るように Akira Kosemuraへ戻る

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2011年7月11日 (月)

連載コラム『細い糸に縋(すが)るように』
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小瀬村 晶 / AKIRA KOSEMURA

1985年生まれ。東京在住の音楽家、音楽プロデューサー。
これまでに国内外の音楽レーベルから作品を発表しているほか、TVやWEBのCM音楽、ファッションブランドのサウンドデザインなど、様々な分野で活動を展開。
2007年より自身が手掛けるレーベルSCHOLE RECORDSを主宰し、これまでに数多くの若手音楽家を発掘、作品のプロデュースも行っている。
2011年4月に自身5枚目となるソロアルバム「how my heart sings」を発表。



先月に続いて、ピアノコンサートツアーの話。

6月5日の福岡公演と11日の京都公演を終えて。
翌週からは18日の岡山公演、25日の仙台公演、7月3日の東京公演、そして9日の横浜公演と続きました。

岡山公演。
会場となった天神山文化プラザでは、託児所を併設していたので、お子さん連れの若い奥様も多数遊びに来てくださっていました。
僕のコンサートでは、普段から特に年齢制限を設けてはいないのですが、それでもやはり、小さなお子さんのいらっしゃる方は、2時間のコンサートに出掛けるのは一苦労だそうで…
これからは、こういった配慮のあるコンサートがもっと増えていったらいいなと思います。
ひさしぶりに当真伊都子さんの演奏が聴けて嬉しかったなぁ。娘さんにも初対面できて良かった!

公演はというと、昨年に続いて、とても和やかな雰囲気。岡山で演奏すると、いつもお客さんの温かさに救われて、なんだかとっても楽しい演奏になるのです。仲の良い友人と会話をしているような。
僕にとっては、コンサートの醍醐味を教えてくれる、大切な場所です。


続いて仙台公演。
会場は、3F建ての建物の地下へと続く階段を降りた先にある、カフェモーツァルトアトリエ。
店内に並ぶ椅子は、どれもひとつずつ違っていて、一脚も同じものがないんです。そのアンバランスさが、絶妙なバランス感覚をもたらしていました。
ちょっとした棚に飛行機のミニチュアが飾ってあったりもして…隠れ家のような温かい空間。
テラスに出ると、そこにはたくさんの緑が共存していて、その先にはなんと切り立った崖が…下を覗くと川が流れていました。
その開放的なテラス席の居心地がすごく良くて…二時間くらい居座ってしまったくらい。

本番では、その様々な椅子を敷き詰めるように並べ、僕はその前での演奏。
今回のツアーのなかでも、最もお客さんとの距離が近い公演でした。
どう書いたらうまく伝わるか分からないけれど、音楽は、時として、作曲/演奏している本人の想像を軽々と超えて、なにか大切な気持ちや感覚を共有できるものだと思います。
きっとそれは、いろいろな要素が絡み合って起きることなんだと思うんだけど、そんな貴重な音楽の時間を共有できたことに、深い感動を覚えました。
共演してくれたpaniyoloことパニくんの、たゆたうようなギター独奏もとても心地良かった。

そして3日の東京公演、9日の横浜公演。
東京公演は、新宿文化センターでの演奏。ここも初めての会場だったけれど、個人的にはとても演奏のし易いホールでした。

実は仙台公演に続いて、この東京公演と横浜公演の三公演は、PAを使わずに、完全アコースティックでの演奏(つまり、電気をまったく使わずにピアノとバイオリンの生音だけでの演奏でした)だったので、会場のピアノや、響き方、雰囲気や湿度によって感じ方も聴こえ方も大きく変化します。
なので、同じ曲を演奏していても、弾いていて聴こえ方や感じ方が変化するので、それに合わせて演奏の仕方も自然と変わっていきます。
僕はどちらかというと、そういう、その場特有の雰囲気に寄り添って自分の音楽を演奏するのが好きなので、生音で演奏できる場合は極力そうするのですが、東京公演の会場となった新宿文化センターでは、とても上品でまろやかな音に、対して横浜公演の会場となった大倉山記念館では、古いレコードから聴こえる、少し調子はずれのレトロでアンティークな雰囲気の音と、同じ曲でもまったく印象の異なる公演/演奏になったと思います。

ちなみに横浜公演の会場となった大倉山記念館は、アルバム「how my heart sings」の録音会場となった場所。
とても思い入れのある場所なので、また戻ってこられて本当に良かった。


二ヶ月に渡って毎週演奏してきたこのピアノコンサートツアーも、残すところあと、16日の金沢公演「金沢21世紀美術館」千秋楽を残すだけとなりました。

ツアーが始まる前は、7週連続7公演の全国ツアーということで、これはきっと大変だ!と思っていたんだけれど、始まってしまえば、本当にあっという間。毎週、楽しいことばかり、たくさんの思い出ができました。
こんなに楽しく演奏していて、そのうち罰が当たるんじゃないかと思うくらい(胃腸炎になったり、足の指を骨折したりしたのはそれかもしれない!)、各公演を企画してくれたり協力してくれた皆さん、会場スタッフの皆さん、SCHOLE Inc.のスタッフ、各公演で共演してくれている白澤美佳さん、菊地慎くん、そして会場に集まってくださるたくさんの方々に、深い感謝の想いで一杯です。

残す一公演も、また特別な一夜になることを願って。
ツアーを締めくくる最高の演奏ができますように。




  http://www.akirakosemura.com/
  http://www.scholecultures.net/

※現在scholeでは東日本大震災支援プロジェクト『SCHOLE HOPE PROJECT』が発足。
 詳しくはレーベルサイト http://www.scholecultures.net/にて。




 Akira Kosemuraの「今月のオススメ」
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 『ウミウシ 海の宝石』
    [ 2009年07月24日 発売 / 通常価格 ¥3,360 (tax in) ]

夏になるとよくこのDVDを流すのだけれど、今度、CS放送の番組「アニマルプラネット」でも放映されることが決まったそうです。なかなかマニアックで渋い作品ですが、夏の夜長にはとてもおすすめ。
ちなみに音楽は僕が担当しています。







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  Akira Kosemura  『how my heart sings』

    [ SCH018 / 2011年04月11日 発売 / 通常価格 ¥2,310(tax in) ]





音楽は歌うように。
小瀬村晶、ピアノアルバム。

これまでに発表してきた4枚のソロアルバムを始め、様々な音楽家とのコラボレーション、TVやWEBなどへの楽曲提供、ファッションブランドへのサウンドデザインなど、小瀬村晶はデビュー以降、様々な手法で自身の音楽と向き合い、それを発信し続けてきた。
今作「how my heart sings」は、そんな彼が最も愛する楽器である「ピアノ」と向き合い、昨年の春から秋に掛けて、歌うようにして紡いできた音楽の記録である。
秋の夕刻、鈴虫が歌う初秋に、大倉山記念館にて録音された本作品には、昨年春のピアノコンサートツアーのために書き下ろされた楽曲やコンサートアレンジに加え、荒木真 (saxophone) と白澤美佳 (violin)を演奏家に迎えた楽曲、そしてツアー後に自宅スタジオで作曲された楽曲が収録されている。
この作品はなによりも、小瀬村晶という一人の人間が、自分の心に映っては消えていく旋律をピアノという楽器を用いて歌うようにして紡いできた、とてもプライベートな音楽である。そして時折、心を寄り添うようにして演奏される二人の音楽家によるハーモニー。

芽吹の春から、静謐な秋へ。音楽は歌うように。

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    『Clarity & Leaf Disc 02』
    [ CLA102 / 2011年03月20日 発売 / 通常価格 ¥3,000 (tax in) ]

scholeが贈る、雑誌とCDの複合媒体『CLARITY vol.2』が2011年春、ついに発刊!
今回のテーマは「旅と音楽」。
東京・西荻窪に佇む"おだやかな音楽を集める"というコンセプトのセレクトCDショップ「雨と休日」から歩き出す、誌面上の世界旅行。西荻窪という地で、こだわりある音楽を自ら提供する、元CDショップバイヤーであり「雨と休日」オーナー 、寺田俊彦のインタビュー。ショップのコンセプトや由来を聞く事で寺田さんの考える「CDを売る」という事への思いが伝わってきました。
そして、Flica、Dom mino'、aspidistrafly、Sawakoなど、アジア・ヨーロッパの世界各地で暮らす、scholeゆかりのアーティスト面々の"その土地の暮らし"を写真と共に切り取ったコラムで紹介。CLARITY上に広がる世界地図を横断しながら、音楽と共にある日々を、本の窓を通して読者とつないでいく。 良原リエ(trico!)による small color ヨーロッパツアーにて旅の日々を綴った「日々の暮らしからのレシピ」、No.9 の「音と共に暮らす」コラム第2弾や、世界平和、環境問題をピックアップする「world peace activity」、散歩道特集「mado no soto」などレギュラーコーナーも旅に彩りを添える、読み応え満載の全50ページ。
音楽と旅が大好きな人へ、ハンドメイド感たっぷりの旅のしおりをイメージした和綴じ仕様でお届け。

今回、付属音源はscholeからも作品をリリースしているsawakoと青木隼人の作品。2010年4月に国立の匙屋で録音されたsawakoと青木隼人のインプロヴィゼーションをベースに、3つのささやかな音の情景をつくりました。記憶や夢が織りなすゆるやかな流れに、イギリスのファーマーズマーケット、新年のポルトの花火、サッカー試合の日のバルセロナの街などの音がミックスされています。スピーカーから流れ出す音の旅をお楽しみください。

「たびのおわりとはじまりと 〜 the end then start again」
sawako + aoki hayato
1. じゅんびはまだ
2. ながるるまま
3. たびのおわりに



次回へ続く…(8/10更新予定)。


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    暖かくて美しい極上のアンビエント・ミュージック。

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    【特集】schole records

    良質なエレクトロニカ/フォークトロニカ作品をリリースし続けるレーベル“schole(スコーレ)”。
    そのカタログタイトルをHMVスタッフが一挙レビュー。







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