2011年10月11日 (火)
- --- まずは簡単に自己紹介をお願いします。
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ゆーきゃんと申します。うたをうたっています。富山県出身、京都在住です。「ボロフェスタ」というインディ・フェスを主催したり、「シグナレス」というユニットをやったりもしています。
- --- いつ頃から活動をしているのでしょう?
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ひとまえで歌うようになったのは、前世紀の終わりくらいからです。
- --- 歌うようになったきっかけを教えてください。
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生まれて初めて曲を書いたのは、14歳のときでしたが、ずっと自分ひとりで満足していて、せいぜい仲のいい友人に聴かせるくらいでした。大学に入り、京都に住みはじめて、ライブハウスやクラブに通うようになりましたが、長いあいだ、フロアにいるのが、踊るのが好きなだけのごく普通のオーディエンスでした。どうして歌うようになったのは、分かりません。きっとうらやましかったのか、苦しかったのでしょう(笑)。
- --- ゆーきゃんに影響を与えたアーティストや作品を教えて下さい。
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いまのスタイルへの影響ということに限ると、Nick Drake『PINK MOON』 、Cat Power 『Moon Pix』、Joao Girberto『Voz E Violao』、渚にて『こんな感じ』あたりでしょうか。ほかにもざっくり言うと、小学校愛唱歌集、古典的なフォークやロックやジャズやソウルのアルバム、90年代以降のUSインディ/オルタナティヴ、音響/エレクトロニカ、それから(世代を問わず)関西アンダーグラウンドのミュージシャンたちにはあれこれ教わっていると思います。
- --- 今回“術ノ穴”(どちらかというとHIP HOPのイメージが強いレーベル)からのリリースになりますが、どのような経緯でリリースが決まったのでしょうか?
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今回のレコーディングをしてくださった、高橋健太郎さんの家が取り壊しになる、ということで、ひょんなきっかけで、その前に記念といいますか、記録的な意味で録音をしたんです。その音源は、どこからリリースする、とかいった考えもなく、ただ仮ミックスの状態で友人たちに配ってまわっていたのですが、たまたま京都にライブで来ていたFragmentを観に行って、お二人にそのCDRをあげたところ、2月ほど経って「もったいないから、ウチから出しませんか?」と。
- --- 『ロータリー・ソングス』というタイトルに込められた意味を教えてください。
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東京に住んでいた二年間―このアルバムはその間に録音を始めたのですが―ぼくは高円寺のレコード・ショップで働いていました。その窓から駅前のロータリーが見えたんです。開店前の店で書いた曲が数曲あるので、まずはそういう意味での「ロータリー・ソングズ」です。
それから、アルバムには「円環」というイメージをいくつも重ねていて、たとえば季節の巡り。たとえば京都から東京へ出てきて、また京都に戻ったこと。たとえば高橋健太郎さんと出会ったのが10年前で、そのときは友人のバンドのレーベルオーナーでしたが、そのご縁がぐるっと回りまわって一緒に作品を作ることになったこと。バンドやユニットでのリリースを経て、7年ぶりのソロアルバム、ということ。いろんなことが「ひとまわりしたなあ」と思ったんですね。 - --- 今回収録の6曲の内、5曲が東京在住時における唯一の音源という事ですが、“東京で過ごした時間”は、ゆーきゃんにとってどのようなものだったのでしょうか?
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いまでも、ことばにするのはとても難しく、お話しする機会を頂く度にちょっとずつブレた内容のことをお答えしているのですが…東京は大きな街、カオスと効率性と、目的意識と無軌道さと、とにかく相反するものが無造作に、かつ、ある意味合理的に溢れているところでした。
電車の乗り継ぎは間違え放題で、道もちっとも覚えられず、人込みでは人にぶつかって、とにかく暮らすのには苦労しましたが、表現という点では、いろんなひとと出会い、いろんな場所に出入りするなかで、からだがおのずと、自分に出来ることと、出来ないこと、うたえることとうたえないことを選別していたのだと思います。その過程を経て、手元に残ったものを磨いてゆく、そういうこころの内側での作業を一からやり直すためのよい機会を、東京暮らしのなかで与えてもらったということだけは、はっきり言えます。 - --- 現在は京都に戻っているそうですが、ゆーきゃんにとって“京都の魅力”はどのようなものなのでしょうか?
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…分かりません(笑)。道がまっすぐで、歩けばいつかは家に帰れること?空が綺麗で、川が綺麗で、山並みが綺麗なこと?でもそんな土地はたくさんありますよね。
あえて言うなら、街並みや人々の暮らしが寂しくもなく慌ただしくもないところ、街が適度にひとに構わず、適度にひとを大切にするところ、でしょうか。そのおかげか、実際に京都には、大げさなことはしないけれど、独創的な表現方法を生み出している、そんなクリエイターたちが沢山います。彼らと出会い、そのなかに交われるのはとても幸せなことだなあと感じることは多いですね。
あ、あと、お寺が多いこと。お寺の「庭」は素晴らしいです。心が浄化される気がします。 - --- ゆーきゃんにとって、創作の源となっているものは何ですか?
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本、映画、景色、ニュース、会話、見たり聞いたりしたことが心の中に溜まっていって、ある日、空気というかビジョンみたいなものになってぼくのところにやって来ます。最初のコードかメロディの一部が決まれば、だいたいあとは、おのずと曲が走り出してゆきます。
- --- 『ロータリー・ソングス』は、ゆーきゃんにとってどのような作品になりましたか?
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1年半前にレコーディングを始めた作品を磨き直して仕上げた、ということもあって、いままでで一番客観性の高い作品のような気がします。聴いてほしい”自分”というものがずっと薄れて、ただ「うた」と「ことば」として味わえるものになった、といいましょうか。でもそのなかに、自分が持っている温度やタイム感がほんのりと滲んでいるような感覚もあって、これがきっと今の「ゆーきゃん」なんだなあ、と思っています。
- --- 最後に今後の予定を聞かせてください。
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今年は、年末までボロフェスタやリリースツアーを含めてライブをたくさんします。年明けからは次の作品の制作に取り掛かりたいと思っています。実は、次のアルバムの構想はもう出来ていて、今いろいろ下準備をしているのですが、あらためて、<つくる>ということの楽しさを感じているこの頃です。
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インタビュー/文:松井剛
ゆーきゃん
『ロータリー・ソングズ』
2011年10月12日発売
昔からずーっとゆーきゃんのファンだったというFragmentが主宰するレーベル“術ノ穴”(今いちばんイケてるレーベル!)からリリースされるゆーきゃんの新作!悲しくも暖かいフォークソングがじわじわと聴くものを包み込む傑作です!
[収録曲]
01.「ファンファーレ ♯0」
02.「空に沈む」
03.「地図の上の春」
04.「サイダー」
05.「Y.S.S.O.」
06.「天使のオード」(Live at UrBANGUILD,Kyoto)
ゆーきゃんwith his best friends
『sang』
2nd Album
くるり岸田氏の心を奪い、「彼らの演奏に誰よりも引き込まれたのは、間違いなく僕だ。」と言わしめた傑作。NOISE McCARTNEYからリリースされた2ndアルバム!
[収録曲]
01. ラプソディ
02. 詩月(album mix)
03. 春を待つ
04. 八月のブルー
05. プリズム
06. 真冬の兎
07. 月曜日(album mix)
08. 夕暮れの街(w.h.b.f version)
09. エンディングテーマ
10. sang
富山県生まれ、京都在住のシンガーソングライター。
USガレージ・フォーク/サッドコアの影響を受けた音楽性と、日本語の豊かな響きを生かした文学的な歌詞を武器にした、唯一無二な空気感をもつ弾き語りを身上とする。
近年では不定形なユニット形式でのライブも多数行っており、サポートメンバーにはエマーソン北村、山本達久(NATSUMEN)、須原敬三(ex.羅針盤)、田代貴之(ex.渚にて)など名うてのミュージシャンが名を連ねる。
また、山本精一、JOJO広重(非常階段)といった関西アンダーグラウンドの巨人たちとコラボレーション形式での共演も盛ん。
京都にて2002年より続くDIYフェス「ボロフェスタ」をロボピッチャー、Limted Express(has gone?)、MC土龍らと共に主催。ジャンル・シーンを越えた音楽の理想郷を現出させるべく、10年間に渡って心血を注ぎ続けている。
ゆーきゃん official web site
http://akaruiheya.moonlit.to/