サヴァールがビーバーの53声のザルツブルク大聖堂ミサを録音！ SACDニュースへ戻る

2015年8月1日 (土)

ビーバー：ザルツブルク大聖堂ミサ曲、モテット『ティンパニを打ち鳴らせ』、他
サヴァール＆ル・コンセール・デ・ナシオン

オーストリア・バロックの作曲家ビーバーは、ヴァイオリン音楽や室内楽、宗教音楽などに斬新かつ技巧的な一方で、神秘性や深みもある傑作を書いたことで知られています。
　これまでに「レクィエム」と「ブリュッセル・ミサ」という２枚のビーバー作品集を発表しているサヴァールが今回取り組んだのは、ビーバーの宗教音楽分野の代表作でもある『ザルツブルク大聖堂ミサ曲』。レコーディングはALIA VOXレーベルの優秀録音盤を数多く生み出してきたカルドナ城でおこなわれています。
　『ロザリオ・ソナタ』や『ザルツブルク大聖堂ミサ』でおなじみのハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバー[1644-1704]は、ヴァイオリンの名手として名を成し、やがて、ザルツブルク大司教のもとで、宮廷楽長の地位にまで登りつめた作曲家。
　宮廷作曲家として教会音楽を書くときのビーバーは、『ザルツブルク大聖堂ミサ』など荘厳な美に彩られた作風が特徴的でしたが、器楽作曲家としてのビーバーの作風は、『ロザリオ・ソナタ』に聴かれるように、ときに大胆で過激なまでの手法を駆使することもあったという革新的な存在でもありました。
　今回のサヴァールのアルバムでは、そうしたビーバーの多彩な魅力を味わうべく、『ザルツブルク大聖堂ミサ』のほかに、ファンファーレ作品やファンファーレを伴う声楽作品、そしてユニークな『戦い』なども収めています。

【凝った選曲】
このアルバムは、ビーバーと同時代のオーストリア・バロックの作曲家、バルトロモイス・リードル[1650頃-1688]の器楽作品『ファンファーラ』で華やかに開始されます。これはゲーベル＆マクリーシュ盤でも成功していた手法です。
　続くビーバーのモテット『太鼓を打ち鳴らせ』は、金管に打楽器、オルガンも大活躍する声楽作品で、祝典的な気分をさらに盛り上げます。『ザルツブルク大聖堂ミサ曲』と同じ1682年に書かれています。
　3曲目の器楽作品『戦い』は、1673年にザルツブルク宮廷で開催された謝肉祭の行事のために書かれたとされる作品。ビーバーの奇想天外な作曲スタイルを象徴する音楽として知られるもので、コル･レーニョや多調、バルトーク･ピチカートのようなピチカートにプリペアド奏法などを駆使、弦によって兵士たちの酒宴から戦闘の様子、大砲の音なども模すという面白さ。サヴァールのお気に入りでもあるのか、2002年の録音を敢えて挿入しています。
　その次の9声のソナタ『聖ポリカルピ』は、金管と打楽器によるファンファーレが印象的な作品で、他の演奏家による録音も多い壮麗な音楽。1673年に書かれています。
　最後に置かれたのが53声の『ザルツブルク大聖堂ミサ曲』。かつてこのミサ曲は、ローマ楽派の巨大バロック様式で知られる作曲家、オラツィオ・ベネヴォリ[1605-1672]によって、1682年10月のザルツブルク布教1100周年を記念する祝祭のために作曲されたものと言われてきましたが、近年の研究では、作曲したのは実際にはビーバーであったことが判明しています。複合唱様式の伝統に連なる最後の重要作品ということです。（HMV）

【収録情報】
1.　リードル：ファンファーラ
2.　ビーバー：モテット『太鼓を打ち鳴らせ』 (1673)
3.　ビーバー：10声の『戦い』(1673)
4.　ビーバー：9声のソナタ『聖ポリカルピ』(1673)
5.　ビーバー：53声の『ザルツブルク大聖堂ミサ曲』 (1682)

　ハンア・バヨディ＝ハート
　マリアンヌ・ベアーテ・キーラント
　パスカル・ベルタン
　ダヴィド・サガストゥム
　ニコラス・マルロイ
　ルイス・ヴィラマジョ
　ダニエレ・カルノヴィッチ
　アントニオ・アベーテ
　ラ・カペラ・レイアル・デ・カタルーニャ
　ル・コンセール・デ・ナシオン
　ジョルディ・サヴァール（指揮）

　録音時期：2015年1月14-16日（1,2,4,5）、2002年2月11日（3）
　録音場所：カタルーニャ、カルドナ城
　録音方式：ステレオ（デジタル）
　SACD Hybrid
　CD STEREO/ SACD STEREO/ SACD SURROUND