激ロック×HMV&BOOKS online vol.78

GENRE：PUNK ROCK, LOUDROCK
現代版日本語青春パンク・ロック・バンド、カバーも含めたニュー・アルバムを完成
オープニングを飾る「TO THE END」から心を鷲掴みにされた。まどろむようなイントロから優しい歌メロが始まり、徐々にドラマチックな螺旋階段を上がる展開に痺れまくり。いきなりの超名曲に意識を奪われるものの、そのあとに続く楽曲も決して引けを取らない楽曲クオリティで惹きつける。シンガロングが渦巻いて大合唱のライヴの画が浮かんでくる「笑っていようぜ」、甘酸っぱいメロディに胸が躍らずにはいられない「アイラビュベイビー」、ドキドキする感情を掬い取った疾走感溢れる「ハートビート」など、各楽曲もキャラ立ち抜群で、どストレートな歌詞と曲調は一度聴いただけでわかる即効性があるし、また何度も噛みしめて聴くたびに深い味わいがある。TULIPのカバー「心の旅」もいい。
荒金 良介 【ライター推薦】

GENRE：LOUDROCK, ELECTRO
12年のキャリアが裏打ちする、今のvistlipだからこそ生み出せる復帰第1弾シングル
転んでもただでは起きなかった結果、vistlipはバンドとしてのさらなる進化を果たしたうえ、ある意味での初心さえをも取り戻したようだ。昨秋、病に倒れ加療を必要とすることになった智（Vo）は、当時そんな自分のことをキズモノになったと感じていたところがあったそう。ライヴ活動が休止してしまったことに対しての罪悪感にも苛まれたというが、“lipper”に収録されている3曲の歌詞たちはその渦中、復帰後、さらには現時点から未来まで見通したものになったそうである。むろん、疾走感を漂わせたvistlip節とバンド・サウンドとしてのグルーヴ感にもいっそうの磨きが掛かっていることは間違いない。本紙読者向けとしては、瑠伊（Ba）作曲のダイナミズム溢れるTrack.3も強く推しておきたい。
杉江 由紀 【ライター推薦】

GENRE：EXTREME J-POP, LOUDROCK
ネガをポジに変転させる人生の教科書的1枚
ヒスパニの3年3ヶ月ぶりとなるアルバム。今作は“ネガ（陰）”を“ポジ（陽）”に変えて、人生をサバイバルするんだ！ という彼ら流の前向きな気持ちを詰め込んだ作風になっている。先行シングル「弱虫ライオット」もそうで、ひとりでクヨクヨ悩まずに一緒に歌って元気を出そう、というメッセージが込められているようだ。音楽的にはトリプル・ヴォーカル編成のラウドロックを解き放っているものの、ポップ且つキャッチーなメロディ・センスも相変わらず。ノリのいいリズムを用いた「ALIENS」、極悪なダークさで迫る「アウトレイジ」、モーニング娘。のカバー「恋愛レボリューション21」など、曲調もバラエティ豊か。なお、初回限定DVDにはライヴ・ドキュメントや今作のレコーディングの模様もあり。
荒金 良介 【ライター推薦】

GENRE：ROCK, EMO
音楽的好奇心を全開にダンサブル且つ劇的に仕上げた、ドラマ“ボイス”主題歌
放送中の日本テレビ系土曜ドラマ“ボイス 110緊急指令室”の主題歌「バッドパラドックス」。鋭角なギター・リフとファットなベース・ラインによるインパクトの高いイントロから、大きなビート感のドラミングで、重厚でスケール感のあるサウンドで持っていく曲は、ダンサブルであり、ドラマ性の高い内容だ。後悔の念や諦めの気持ちに溺れないように、暗中模索して再び衝動を取り戻そうとする、様々な感情が入り乱れ、引き裂かれそうなヒリヒリとしたテンションを、馬力のあるビートで加速させる。切迫した鼓動を、臨場感たっぷりに聴かせている。6月にリリースした試みのあるミニ・アルバム『SICK(S)』からわずかな間だが、前のめりに音楽的好奇心を全開にしている今のバンドの姿勢が音に織り込まれた。
吉羽 さおり 【ライター推薦】

GENRE：ROCK
15周年を迎えた9mm節が詰まった、約2年ぶりのニュー・アルバム完成
今年2019年に結成15周年という節目を迎えた9mm Parabellum Bulletが、約2年ぶりとなるニュー・アルバムを完成させた。今作には昨年配信リリースされた「Carry on」、「21g」、「カルマの花環」といった楽曲や、15周年リリース第1弾としてリリースされた「名もなきヒーロー」など、どれも期待を裏切らない9mm節が詰まった全12曲が収録されている。ゴリゴリの疾走感で駆け抜ける激しさや、メランコリックなメロディ、変拍子の不穏さ、詩的で寓話的なのに血の通った言葉など、そのすべてが甘く溶け合い、深い青を描く9mmの世界。この作品で、まだその沼にハマったことのないロック・ファンも、15年の成熟を経た彼らの不思議な魅力に引きずりこまれるだろう。
山本 真由 【ライター推薦】

GENRE：POP PUNK
元YELLOWCARDのWilliam Ryan Keyプロデュース
ポップ・パンクの入り口に相応しい、AIRFLIPのメジャー1stフル・アルバム
これぞポップ・パンクのど真ん中！ な大阪発の4人組、AIRFLIPのメジャー1stフル・アルバム。日本のバンドにも大いに影響を与えたUSバンド、YELLOWCARDのフロントマンであるWilliam Ryan Keyをプロデューサーに迎えたことも、功を奏しているのだろう。心を弾ませる爽やかな疾走感、ひとさじの切なさが溶け込んだメロディ、シンガロングに誘うコーラスなど、すべてがポップ・パンクの入り口に相応しい。Ryanが参加した「Days In Avenue feat. William Ryan Key」などは、海外のポップ・パンクを愛聴している人にもおすすめ。しかし、最も余韻となるのは、日本語詞に滲み出る郷愁など“彼らだけのもの”であるところに、ライヴで鍛えてきた底力が表れている。
高橋 美穂 【ライター推薦】