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Top 50 Singers of All Time - 27位

2006年12月5日 (火)

ジャーナリストがオアシスのメイン・ヴォーカル、リアム・ギャラガーの歌声を評して言った言葉、ジョニー・ロットンジョン・レノンを合わせたような…はリアムをご機嫌にさせた(彼らはリアムのヒーローだから)。この言葉には的を得ている部分もあるし本人もまんざらではないので結構な話なのだが、やはりその直後にオレはオレだ、と率直に話す男、このことこそがリアム・ギャラガーでもあるのだ。ジョン・レノンジョニー・ロットンにあるような政治性や鋭い洞察力をリアムに見ることはできないが、オアシス特有の、サッカー応援歌のような「僕達の歌」を歌わせたら、リアム以上にリアルに歌える者はいないのだ。

ウィリアム・ジョン・ポール・ギャラガー(通称リアム)は英国北部のマンチェスターにギャラガー家の三男として生まれた(ちなみに次男はご存知オアシスのお兄ちゃんこと、ノエル。長兄のポールはのちにバンド・マネージャー及びA&Rマンとしてクリエイション・レコーズで働くことになる)。父は建築現場作業員ということで家庭は典型的な労働者階級に属したが、その父は酒乱で博打うちで、暴力をふるうは、家に金は入れないは、女はつくるは、という問題を抱えた父親で、主に母のペギーが働いて家計を支えていたという。かなりの悪ガキとして少年時代を過ごしたリアムが音楽に目覚めたのは16歳の時のこと。その頃ストーン・ローゼズを観に行き、ただならぬショックを受けたことがキッカケだそうだ。その頃、兄ノエルにデュオを組もうと再三持ちかけたが、三度とも断られたという。勿論もっと後にはリアムが仲間とやっていたバンドにノエルが入り、歴史が動き始めるのだけれど。

リアムの声のニュアンスはかなり独特だ。すぐにそれと判るのはオアシス・ファンだけではないだろう。名曲“リヴ・フォーエヴァー”での、ジョニー・ロットンばりの巻き舌のAメロ〜それと対称をなすメロディの切羽詰ったような展開部分を経て〜ジョン・レノン的なファルセットに移行するという歌い方は、兄ノエルの作ったメロディの良さをより効果的に惹き立たせる力を持っている。“ロール・ウィズ・イット”での“シー・ラヴズ・ユー”や”ストリート・ファイティング・マン”に劣らぬ(!?)斬り込み方、“サム・マイト・セイ“での引き摺るようなダルな歌い出しから、何かを急かすようなヴォーカル(これもジョニー・ロットン的か)に展開するところなどには、リアム以外には出せない爆発力がある。また比較的スローでじっくり聴かせる曲は兄のノエルが歌いたがるため、リアムの出番は少ないが、そちらの方でも荒くれた者だけが出せるセンチメンタルな情感を見出せることも付け加えたい。

ヴォーカル・スタイルという面でリアムから影響を受けたシンガーというと、モロに、というのはあまり思い浮かばないが(リアムのキャラあっての歌唱法という気もする)、一時期のエンブレイスや盟友ヴァーヴの最後期のサウンド、歌唱にはそれぞれ独自のものを持ちながらも、オアシス、リアムの影を感じるというか、同時代の空気感が漂う。

リアム・ギャラガーにはそのキャラクター、歌唱ともに人から愛される天性のものを持っている。多くのミュージシャンにも愛されるリアムだが、筆頭に挙げられるのはレモンヘッズイヴァン・ダンドゥだろう。”リヴ・フォーエヴァー”をカヴァーしたほか、一時期はオッカケみたいに熱を上げていたと言われる。また90年代中頃にロビー・ウィリアムスが、オアシスやリアムに対するジェラシーとも言うべきリスペクト&反目を見せたのも印象的だった。具体的に挙げるほどよく知らないので申しわけないが、日本の若手ミュージシャンの中にも結構リアム好きは多いのではないだろうか。オアシスがこの先もずっとバンドとしてのキャリアを続けていくのかどうかは現時点ではまだ不透明だが、リアムの不遜ともとれるが、しょうがないやつだな、と愛されてしまうキャラクターと、ある瞬間には同時代で聴けて良かった、と感じることができるリスナーに奇妙な連帯感を誘う歌は、これからも不変ではないかと勝手に思っている。

※表示のポイント倍率は、
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。