【インタビュー】「さよならソルシエ」良知真次&平野 良

2015年11月15日 (日) 09:00

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取材・文/古知屋ジュン
掲載・構成/月刊ローソンチケット編集部 11月15日号より転載

ピアノと歌で紡がれる物語
“ふたりのゴッホ”の絆を描く


“炎の画家”として知られるフィンセント・ファン・ゴッホを、画商として生涯にわたりサポートした弟のテオドルス・ファン・ゴッホ。このテオドルスを中心に、知られざる“ふたりのゴッホ”の絆や確執を情感豊かに描いた大人気コミック「さよならソルシエ」(作・穂積)が、このたびミュージカル化される。

クールな表情の奥に才能ある兄への屈折した感情を秘めた弟・テオドルスを演じるのは、超歌劇『幕末Rock』などでの好演が記憶に新しい良知真次。純真で自らの才能に無自覚な兄・フィンセントを、様々な2.5次元作品でおなじみの平野 良が演じる。数多くの舞台に出演しているふたりだが、意外にも本作が初共演ということで“化学反応”が楽しみな本作について話を聞いてみた。

良知:普通なら画家のフィンセントを中心にした話になるはずなのに、そうじゃなく視点を変えた内容になっているのがまず面白いと思いましたね。ミュージカルに例えると、『オズの魔法使い』で悪い魔女として描かれていたキャラクターが、アナザーストーリーの『ウィキッド』では善い人間だったというような……同じ話でも視点を変えると、見え方がこんなにも違うんだなって。

平野:僕はそもそもゴッホの生い立ちを詳しく知らなかったんで、原作を読んだあとにゴッホを巡る諸説を“これは本当なのかな?”ってネットで調べたりしましたね(笑)。それで、普通の2.5次元作品とちょっと違うところは、この作品はコミックだけで、キャラクターを演じるためのお手本になるアニメみたいな映像がないんですよ。ですからビジュアルの再現にはもちろんこだわりつつ、作品テーマでもある兄弟ふたりの心情のやり取りを重視して演じられたらというふうに思っています。

良知:タイトルのソルシエは“魔法使い”っていう意味なんですけど、この作品だとキャラクターの声をまだ誰も聞いてないから、そういう意味では自分たちが作品に新たな色を付けるという魔法をかけられるのかな? そのキャラクターが作品のなかで言わなかった気持ちが歌になったり、振付が付いたりすると、それをお客様に自然に観ていただくために、さらなる魔法をかけなければいけない……というプレッシャーはありますけれども(笑)。

それぞれの演じる役柄について「テオドルスはお兄さんに対して愛情や嫉妬だとか色んな意味で思いが強いので、その思いを丁寧に表現できたら」(良知)、「フィンセントはおっとりしているけれども、懐が深い人物として見せられたら」(平野)と語るふたり。誰よりも早くフィンセントの才能に気付き、当時の芸術シーンに広く売り出そうとしたテオドルス。ストーリー中にはふたりに手を貸そうとする若き芸術家たち、その行く手を阻む画壇の重鎮たちといったキャラクターも登場するが、果たしてどんな座組になるのかも気になるところだ。

またそれぞれ過去の出演作で歌のうまさには定評があるが、今回はピアノと歌というシンプルな編成でその歌声をじっくり堪能できるのも注目ポイントのひとつ。

平野:僕はこれまでオケがあるか、バンドやオーケストラの演奏に助けられて歌ってきたから、正直不安はあります。でもこの作品に関してはシンプルなほうが、キャラクターの感情が伝わりやすいんじゃないかと思うんですよ。音楽的な面でいうと個人的にはハードルが高いけれど、“本気の向こう側”に行けそうな作品ではありますね。

良知:僕は『スリル・ミー』(2012〜13年)でやはりピアノだけで歌う作品をやっているので、もちろん大変だというのはわかりつつ(笑)、ピアノは優しい音も狂気的な音も出せるし、それだけで色んな世界観が作れる楽器ですから。キャラクターの心の動きを表現するという意味では伴奏がピアノというのは強みになるんじゃないかと思います。

今作は高い人気を誇るコミックが原作ではあるが、原作ファン以外にもさまざまな形で楽しんでほしいと意気込むふたり。

平野:ストーリーの描かれ方に深みがあるので、色んな楽しみ方ができると思うんですよ。原作を知らないという方でも舞台を観た後にきっとコミックを読みたくなるだろうし、実際のゴッホの絵画に触れたくなるかもしれない。そういうふうに、どんどん広がりを見せる作品になったらいいですね。

良知:日本オリジナルの2.5次元ミュージカルというジャンルに、色んなシーンで活躍しているキャストが揃うので、日本のエンタメが持てる力を集結させたものを見せられたらとも思います。今回の企画制作のマーベラスとは超歌劇『幕末Rock』でも組んでいるんですけど、初演と再演で構成がまるで違ったり、僕らキャストもビックリするようなアイデアを出してくるんですよ(笑)。だからこの作品でも、いい意味で原作ファンの方々の期待を裏切れるようなものをみんなで作っていきたいですね。

© 穂積/小学館フラワーコミックスα
© ミュージカル「さよならソルシエ」プロジェクト
プロフィール
ラチ シンジ
'83年、東京都出身。舞台のほか映像作品、アーティスト活動、振付など幅広い分野で活躍中。現在、ミュージカル「ダンス オブ ヴァンパイア」に出演中。
ヒラノ リョウ
'84年、神奈川県出身。ミュージカル『テニスの王子様』などで高い人気を獲得。12月には舞台「夜の姉妹」への出演が決定している。


公演情報


ミュージカル「さよならソルシエ」

原作:穂積「さよならソルシエ」(小学館)
脚本・演出:西田大輔
音楽:かみむら周平
出演:良知真次、平野 良 ほか

3/17[木]〜21[月・祝] Zeppブルーシアター六本木

掲載誌面:月刊ローソンチケット/月刊HMVは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布

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