無人島 〜俺の10枚〜 【DYGL:Yosuke Shimonaka 編】

2017年04月26日 (水) 18:00

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バンド・キャンプでの作品リリース『EP #1』(2015年)、そして昨年(2016年)リリースした初の全国流通盤EP『Don't Know Where It Is』、7inchシングル『Waste Of Time / Sightless』を通じ、たちまち耳の肥えたリスナーをロックし、コアな洋楽リスナーも黙ってはいられない程の存在感を示した DYGL(デイグロー)。その純度の高いロック・サウンドは、90年代生まれのバンドメンバーと同世代の若者はもちろん、90〜00年代の US&UKインディーに熱中したかつての若者世代をも再び音楽の渦に引き戻すほどのパワーをもって僕らを惹きつける。もっと言えば、国境なんか軽く飛び越え世界の早耳リスナーの注目を集めているのだ。

2012年に大学のサークル内で結成された DYGL は、2016年末をもって活動を休止した Ykiki Beat のメンバー3人が参加している4人組バンド。Ykiki Beat よりもインディ・ロックが持つむき出し感全開のサウンドが印象的だ。そんな彼らが結成5年目にして遂に1stフルアルバム『Say Goodbye to Memory Den』をリリースする。この作品が、プロデューサーに The Strokes の Albert Hammond Jr. を迎え、NYで制作されたというから驚きだ。盤石ではないか。

このアルバムリリースを契機に国内外を問わず大きな躍進を見せてくれるだろう DYGL が、ローチケHMVニュースの「無人島 〜俺の10枚〜」に登場。連載形式で毎週1名のメンバーが10枚の作品を紹介してくれる。さて、彼らが影響を受けたインディ・ロックとは?


無人島 〜俺の10枚〜 【DYGL:Yosuke Shimonaka 編】
音楽好きには、超定番の企画“無人島 〜俺の10枚〜”。なんとも潔いタイトルで、内容もそのまんま、無人島に持って行きたいCDを10枚チョイスしてもらい、それぞれの作品に込められた思い入れを思いっきり語ってもらう。ミュージシャンとしてルーツとなるもの、人生を変えた一枚、甘い記憶がよみがえる一枚、チョイスの理由にはそれぞれのアーティストごとに千差万別。今回のお客様は、DYGL から Yosuke Shimonaka(ギター)が登場。

各メンバーが選んだ10枚はこちら


Antonio Carlos Jobim 『Wave』
さぁ、あなたにはこれから無人島にいってもらいます。と言われたとして先ず思い浮かぶのがエメラルド色のきれいな海です(おめでたい)。そんな素敵な海沿いの生活ならこのアルバムが入用になるということは多くの人の予想の範囲内でしょう。なんとなくボサノバにはすごくセクシーなイメージがあります。そもそも海ってセクシーじゃないですか?水着とかのイメージで言っているんではなくて。それはセクシーではなくて助平心です。タイトルの Wave とは言わずもがな波のことですが、波の終わらないリフレインもなんとなく音楽的でセクシーですよね。正直に言えば、このアルバムには大した思い入れはありません。でも、ひとたび聞いた時から、海のことを考えるとこのアルバムがどうしても頭に浮かんでくるのです。どうせ無人島だし、時間もあるから隅々まで聴いていたいという気持ちもあります。言っていることが、そこはかとなく、シティポップっぽいですね。


Jim O’rouke 『Eureka』
これも直ぐに思いつきました。隅々まで神経の行き届いたストイックな録音作品で、聴いていると様々な感情が想起されます。音楽の妙ですね。高校から大学生になるぐらいのころに初めて聞いたのですが、結局大好きになったのは卒業するころでした。ロックばかり聴いていた当時の僕には、ロック以外のリズムがわからなかったのです。バカラックの「Something Big」がとても素敵で僕もギターをコピーしました。このアルバムは一聴すると優しい質感ですが、でも怒っている音楽だと言われればそんな気もするし、悲しいアルバムだよねと言われたら確かにと納得できるし、歓喜もある。そのあたりはタイトル曲に顕著にあらわれていると思います。アルバムカバーが youtube のコメント欄で異常に不評で、やっぱりみんなそっちに気を取られてるんだなーともったいない気持ちで見ていました。このアルバムカバーの全裸のおじさんが股間に力強くウサギのぬいぐるみを押さえつけている行為の気持ち悪さ。それに絵のこどもらしいかわいげなタッチや純粋さを助長するピンクのインパクトが非常に強い。これは私見ですが、音楽体験のかなり思い切ったメタファーだと思っています。なぜなら、芸術には一つの役割として大人と子供の境界を描くという面があるからです。そこの境界には時間や性などの大人へのパーソナルな変化の営みが必ず存在します。大人と子供、その線があいまいになっている気持ち悪さが正直かつユーモラスによくあらわされていると思いますし、みなさんにも大人って大きなこどもで、こどもって小さな大人だって言われたら思いつく節ありませんか?僕の十枚だけのレコード棚には欠かせない一枚です。


Beck 『One Foot in the Grave』
友達からこのアルバムいいよって教えてもらって聴き始めました。でも正直このアルバムを通しで集中して聞いたことないです。無人島ならそれができると思って選びました。時間あるものね。エネルギー垂れ流しでギターをだらだら弾いて歌っているこのアルバムの感じが、時間のゆっくり流れる無人島をお気に入りの木の枝片手に散策するときなんかによくあっているような気がします。Calvin Johnson のバリトンもいい味してます。あんな低い声どっからでるのやら。私見ですが、都会よりもお空の広いところでゆったり聴きたいですね。晴れていても雨が降っていても会いそうな感じ。無人島にきているので One Foot in the Grave なんてタイトルも皮肉が効いていますね。笑えないですが。


Bill Evans Torio 『Waltz For Debby』
ビルエバンスが良いって話す時は、「お寿司ってね、とっても美味しいんですよ」とでも言ってるのと同じ気分になります。改めてこうして人の目の前で言うこともありませんが、単純に聴けなくなったらつらいのでこの作品は十枚のうちにキープしておきたいと思いました。今更僕みたいな青二才がビルエバンスを多く語ることもないですが、この人のストイックな音楽に対する姿勢は本当にかっこいいの一言に尽きます。あぁ、何を言っても空振りしかしない。このアルバムって別テイクの同じ曲を二曲連続で並べていて、家で聴くと同じ曲が続くからストレスを感じるときが少なからずあるのですが(ハードコアなファンの方々や違いが具体的にわかる方々なら大丈夫なのだろうか…)、無人島なら許せそうな気がします。


Jesus and Mary Chain 『Damage and Joy』
メリーチェイン史上最高傑作と騒がれても全く驚きません。それほど素晴らしいロックンロールアルバムだと確信いたしております。この2017年にメリーチェインが新作を出したっていうから、すごく軽―い気持ちで聴いてみて本当にびっくりしました。なぜなら、抜群にシンプルで素晴らしいことに加えて、内容が百でセックス、ドラッグ、ロックンロールだったからです。彼らがそういうバンドだっていうことは知ってはいましたが、まさか僕の時間軸でそんなアルバムがでるなんて。このアルバムが出たことで僕の中でのメリーチェインが九十年代のバンドから僕の時代のバンドに飛び移ってきたような感覚さえあります。My Bloody Valentine やレディオヘッドの新作も素晴らしかったのですが、彼らの音楽は進化や経験を経た音楽に聞こえて、自分の時代のバンドというより九十年代や大御所としてのイメージが強い。まさかこんな風に時代を飛び越えて僕に直接来てくれるなんてまさしく青天の霹靂。大好きなので無人島に持っていきます。


Big Star 『#1 Record』
特に新しい発見のないアルバム選になっているのは気のせいではないでしょう。でも好きなものは仕方ない。ディスクガイドの王道系が好きなのです。Big Star 好き?という問いこそが信頼できる人できない人を知る問いかけになったりもします(そういうのよくないよね)。それこそ数年前までこそすれデヴィッドボウイ好き?っていう問いかけがそれではあったのですが、なんとなく今のデヴィッドボウイブーム感、ついていけないんだよなーとか感じたりします。そういう人俺だけじゃないと思うんだけど(まぁいいじゃない)。このアルバムをなぜ持っていくかと言えば、まぁそれはシンプルに大好きだからの一言に尽きます。なにが好きなの?アレックスチルトンのソングライティングがメンフィスのルーツ音楽やブルース、ジャズ、ロックンロールを確かに基盤に置きながらもごく自然とそのカテゴリーからはみ出したからです。アレックスチルトンは本当に大好きなのですが、僕はほかの人にあんまりすすめることがない。なぜかといえば、彼の音楽はルーツ音楽とのかかわりが深すぎるきらいがあるから。彼は生まれや育ちからそのフォーマットに良質なジャズ、ブルース、ロックンロールを自然と選んだことかと推測しているのですが、そのフォーマットで歌われる物事や彼の込めた感情などは極めて普遍的なのに、他人に勧められた状態で誰もがそのフォーマットの先までたどり着くとは僕は思えないからです。僕の大好きなアレックスチルトンをせっかく進めたのに、「アメリカっぽくていい感じだね」とかそんなスプーンでちょっとすくって味見したような言われた日にゃ僕は悲しいですよ。誰にも勧めません。勝手に聴いてくれ。君、そんなこと言うけどね、じゃあアレックスチルトンの感情の深みまで君はたどり着いているのかね、と問われたとしても知らない。僕はアメリカの音楽が好きだからね。


The Band 『Northan Lights Southern Cross』
アメリカの音楽が好きという流れから、アメリカの音楽の歴史に深―く名前を残したカナダ人八割のバンドです。私にとってザ・バンドはラストワルツ、ピンクの家、ブラウンアルバム、そしてこれがお気に入りです。なぜこれを無人島に持っていくかと言ったら、ジャケットに依るところが大きいです。てかほぼそれです。このジャケットと同じくらいお空が赤いときにたき火をして、聴いてみようとか思っています。まじおもんない理由はさておき、どうしてこのバンドってこうも捨て曲が少ないのかしら。聴いていても曲の作り方とかは即興性が高いんじゃないかとは思うんですよね。ビーチボーイズみたいにきちっと隅々まで誰かがリーダーシップ取ってやるというよりは民主的な演奏の会話を感じます。会話の質が異常に高い奇跡のような瞬間がこのバンドは延々と続きます。いや、でも誰かディレクションとってるのかな。だとしても、プレイヤーとしての自立をそれぞれから感じることのできるバンドはやはり聴いていて発見も多く楽しいです。このバンドもアメリカっぽくてのどかでいいよねとか言われた日にゃなんとなく笑ってごまかします。


Pulp 『パルプ・ヒッツ』
イギリスに飛びます。ベスト盤です。パルプは本当に大好きなのですが、アルバムとして聴いているというより曲ごとにどうしても聴いてしまいますのでベスト盤を無人島には持っていきます。「Disco 2000」と「Lipgloss」が聴けなくなってしまったら悲しいので十枚に選びました。パルプは実はスミスよりも早く活動を始めていて、ボーカルのジャービスはそのスミスの八十年代の輝かしい成功にシリアスな嫉妬を覚えつつもバンドはついに90年代の初頭にスポットライトを浴び、そののちマイケルジャクソンのステージでいたずらして連行されたりしつつも今や、ブリットポップのあの頃の名曲は?という現地のアンケートでもしっかり上位に入る国民的バンドになりました。実際見たわけじゃないんですけど。実際アメリカでもそこそこの認知度を僕の周りでは感じる不思議なバンドです。レコード屋さんにもきちんと置いてあります。マイケミカルロマンスがパルプのコモンピープルを演奏している動画も Youtube にあります。余談ですが、ジャービスのツイッター、めっちゃおもしろいですよ。


Pavement 『Wowee Zowee (Sordid Sentinel Edition)』
無軌道なアルバムタイトルとジャケットがよくこのアルバムを表していると思います。こちらのエディションのほうがいい曲がたくさん入っていてよいです。先ず、曲として素晴らしいものをきちんと作っているバンドです。それの表現方法が他のバンドと違っているだけでそちらの派手な方に目が向きがちですが、巧みな演奏技術とバンドメンバー同士の奇跡のバランス感覚にも驚かされますし、マルクマスの悲しい現実にたいするアイロニーの先に彼の理想の平穏と自由が伺え切ない気持ちにもなります。「Give It a Day」という曲でマルクマスは現代と17世紀ごろの過去を乱暴に行き来しながら、現代の行き過ぎた現実主義を浮き彫りにするあたりも巧です。もともと素晴らしい曲なのにそれをここまでめちゃめちゃな状態にして演奏すること自体がアイロニカルですし、本当にすごいバンドだなぁ。ということで、無人島行き決定です。


The Beatles 『Let It Be』
はいでました。ビートルズ選ぶやつ。はずせませんでした。数あるビートルズ作品の中でもやはり『Let It Be』のバランスが一枚えらぶのに丁度よかったです。無人島にもこういうシンプルなバンドと曲構成が一番合うと思いました。どのアルバム持って行ってもいいけど、きっといちばん聞きたくなるのはこのアルバムです。ビートルズの不思議は語りつくせませんが、このアルバム全体を聴いていて不思議になるのは、え、そこスネアいれないの?とかそういった様々な楽器とフレーズの巧みな引き算です。ていうかこのアルバムでも相変らずリンゴは摩訶不思議なドラムをたたきます。「Let It Be」のギターソロの後のドラムフレーズ、まじ謎。リズムギター、ベース、ドラムが心地のいい素晴らしいアルバムですね。「Get Back」聴きながら本土へ帰ります。ていうかこの企画、最後に帰れるんですかね。


連載まとめはこちら

無人島 〜俺の10枚〜 【DYGL 連載編】

プロデューサーに The Strokes の Albert Hammond Jr. を迎え、NYで制作。盤石の1stフルアルバムをリリースする DYGL(デイグロー)が、ローチケHMVニュースの「無人島 〜俺の10枚〜」に登場。連載形式で毎週1名のメンバーが10枚の作品を紹介してくれる。彼らが影響を受けたインディ・ロッ...

HMV&BOOKS online-邦楽・K-POP|2017年04月05日 (水) 15:00


作品情報


DYGL
1stフルアルバム『Say Goodbye to Memory Den』
2017年4月19日(水)発売



<Track List>
1. Come Together
2. Crazy
3. Let It Sway
4. Take It Away
5. Thousand Miles
6. Boys On TV
7. Don't Know Where It Is
8. Let It Out
9. Feel the Way
10. All I Want
11. Happy Life
12. A Matter of Time
13. Waste of Time
14. I've Got to Say It's True

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Say Goodbye to Memory Den

CD

Say Goodbye to Memory Den

DYGL

価格(税込) : ¥2,547

会員価格(税込) : ¥2,343

まとめ買い価格(税込) : ¥2,165

発売日: 2017年04月19日


ツアー情報


DYGL「"Say Goodbye to Memory Den "Release Tour」

【追加公演決定】
5月15日(月) 東京都 WWW X
※バンドオフィシャルサイトにて追加公演のチケット先行予約あり(4月12日12:00〜18日23:59)

5月13日(土)大阪府 Shangri-La
5月14日(日)東京都 WWW X
5月15日(月) 東京都 WWW X(※追加公演)
5月17日(水)台湾 台北 THE WALL
5月18日(木)台湾 高雄市 高雄LIVEWARE HOUSE
5月20日(土)香港(※TBA)
5月21日(日)タイ バンコク Rockademy Thailand
5月23日(火)マレーシア クアラルンプール Live Fact
5月24日(水)インドネシア ジャカルタ(※TBA)
5月26日(金)韓国 ソウル(※TBA)
6月8日(木)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
6月9日(金)石川県 vanvanV4
6月10日(土)愛知県 池下CLUB UPSET
6月17日(土)長崎県 Studio Do!
6月18日(日)福岡県 INSA
6月20日(火)熊本県 NAVARO
6月21日(水)香川県 高松TOONICE
6月22日(木)愛媛県 Double-u studio
6月23日(金)広島県 HIROSHIMA 4.14
6月24日(土)岡山県 PEPPERLAND
7月6日(木)京都府 京都MOJO
7月7日(金)兵庫県 神戸VARIT.
7月17日(月・祝)埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
7月28日(金)〜30日(日) FUJI ROCK FESTIVAL '17(※日割り未発表)
8月11日(金・祝)中国 上海 MAO Livehouse
8月12日(土)中国 北京 YugongYishan
8月13日(日)中国 成都市 Little Bar Space
8月15日(火)中国 西安市 Midie Livehouse
8月17日(木)中国 武漢市 VOX LIVEHOUSE
9月6日(水)岩手県 the five morioka
9月7日(木)宮城県 enn 2nd
9月8日(金)福島県 郡山 CLUB #9
9月10日(日)北海道 DUCE SAPPORO
9月29日(金)長野県 ALECX



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