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シェーンベルク(1874-1951)

CD Verklarte Nacht: Rachlevsky / Kremlin Co +r.strauss / Metamorphosen, Webern

Verklarte Nacht: Rachlevsky / Kremlin Co +r.strauss / Metamorphosen, Webern

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    伊奈八  |  茨城県  |  不明  |  2021年09月14日

    弦楽合奏の快感、ここに極まれりといった感のある名盤だ。 指揮者ミッシャ・ラフレフスキーは1946年ソ連生まれ。1973年にソ連を去り、アメリカなどで活躍した。後にモスクワに戻り、1991年にチェンバー・オーケストラ・クレムリンを創設した。このCDは1993年に録音されており、ラフレフスキーが育て上げたチェンバー・オーケストラ・クレムリンの非凡な表現力を堪能できる。 シェーンベルクの「浄められた夜」Op.4(1899-1943)とR.シュトラウスの「メタモルフォーゼン」(1945)とウェーベルンの「弦楽四重奏のための緩徐楽章」(1905)(ラフレフスキーによる弦楽合奏版)及び、「弦楽四重奏のための5楽章」Op.5(1909-1929)の4曲が収められている。いずれの演奏も素晴らしい。 まずは「浄められた夜」。この曲は、大抵は第一ヴァイオリンに重心がある演奏をされる。ところがこの演奏では、ヴィオラ、チェロ、コントラバスといった、内声から低音部が驚くほど充実している。低弦のトレモロを聴いただけでその迫力に圧倒、魅了されてしまう。多くの演奏で曖昧に処理される声部もしっかりと響き、和声の美しさ、ポリフォニックな動きも楽しめる。緩急自在な解釈と、弦楽合奏の響きの魅力に乗せられて、終始心地よく聴いてしまった。これほど弦楽合奏の魅力を堪能させる「浄められた夜」も稀だ。 次いで「メタモルフォーゼン」。この曲は最近苦手となっていた。R.シュトラウス晩年の力作には違いないが、「ツァラトゥストラ」の頃の溢れる創造性とは異なり、ワーグナーばりのゼクエンツの多用や、最終盤のグダグダから漂うキッチュ感が何とも不健康で、脳内で自動演奏されたりすると不愉快で困っていた。 ところがこの演奏は、「メタモルフォーゼン」の良さを最大限に引き出し、曲の価値を再発見させてくれた。この曲は、主声部の弱さを何重にも重ねた伴奏声部で補強するように書かれている。ラフレフスキーの鋭い耳は、声部の厚塗りにより微妙に変化し続ける和声の魅力を実に精緻に具現化している。勢いに任せた部分がなく、精緻でしかも厚みがあり充実した響きなのだ。多重フーガがゼクエンツを繰り返す部分や、「英雄」の主題につながる最終盤は、音楽としての真正さを損なっているかもしれないが、それとて、将棋の大名人が、己の敗北を確信しても容易に投了せず、粘りに粘る姿を思わせて、感動を覚えたのである。 西洋文明、西洋音楽の落日を描いたような「メタモルフォーゼン」の後で、ウェーベルンの「緩徐楽章」を聴くと、灰の中から音楽が再び蘇り、新緑が芽生えるような爽やかな感動に陶然とさせられた。なんとも美しく実に心地よい編曲と演奏で、是非多くの方に聴いてほしい音楽となっている。 最後は「弦楽四重奏のための5楽章」の弦楽合奏版だ。ケーゲル指揮の名演ほどの緊張感はないが、これも良い演奏だ。新しい世界が開ける様を見せつつ、底にはロマンチックな感情が息づいていることを感じさせる演奏と言えようか。 このCD一枚で、弦楽合奏の魅力を堪能しつつ、ロマンチックな音楽の死と再生のドラマさえ味わえる。カバーイラストのクリムトの絵が妖しいからと敬遠せずに、是非聴いていただきたい。

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