当事者の声をその時々のリアルタイムで訊いてきた著者だからこそ、ここまで精緻に本として作り上げることが出来たのだろう。ファンブックやまとめサイトにありがちな自己投影をせずに、クロニクルとして、まさに「読むベストアルバム」として機能する一冊。30年も活動し数え切れない名作を産み落としてきたからこそ、人それぞれフェイバリットは違って当たり前だが、この本を読んだ後にアルバムを聴くとまた感じ方も変わってくる。録音背景と時代背景を改めてトレースできる点からも資料的価値が高い。常々思うが当時の「出せばミリオン」の音楽バブル全盛期に彼らが決めた「大ヒットしたTomorrow never knowsやシーソーゲーム等を深海に入れない」という矜持溢れる選択を、自分がレコード会社の重役だったら到底受け入れられなかっただろう。J-popのフォーマットを失わずにJ-pop界に遺した、あまりにも大きい功績である。