【深堀りレビュー】
『風立ちぬ』は宮崎駿監督による「スタジオジブリ」制作映画の第9作(2013年7月20日公開)。宮崎駿監督による渾身の最新作であり、そして“最後”の長編作品です。
『風立ちぬ』公開となった2013年7月20日、21日の2日間での興行収入は9億6,088万円、観客動員数は74万7,451人となり、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)初登場第1位!そして2013年の映画興行収入ランキングでも堂々第1位!と大ヒット作品となりました。また映画公開中の同年9月、宮崎駿監督は『風立ちぬ』を最後に長編映画製作から引退することが発表されました。
―飛行機は美しい夢。
零戦の設計者、堀越二郎とイタリアの先輩ジャンニ・カプローニとの同じ志を持つ者の時空をこえた友情。いくたびもの挫折をこえて少年の日の夢にむかい力を尽すふたり。大正時代、田舎に育ったひとりの少年が飛行機の設計者になろうと決意する。美しい風のような飛行機を造りたいと夢見る。
映画『風立ちぬ』の原作は、宮崎駿監督が月刊誌「モデルグラフィックス」に連載していた漫画『風立ちぬ 妄想カムバック』。零戦の設計者、実在の人物である堀越二郎の半生を描いています。この作品には『風立ちぬ』という題名をはじめ堀辰雄の小説『風立ちぬ』からの着想も盛り込まれている為、映画の宣伝ポスター等には「堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて」と記されています。
また原作である『風立ちぬ 妄想カムバック』ではなんと!登場人物のほとんどが擬人化された「豚」として描かれています。これは同じく『紅の豚』の原案となった「モデルグラフィックス」に連載された漫画記事、宮崎駿の雑想ノート「飛行艇時代」と同様の手法ですね。ただしヒロインの菜穂子だけは、人間として描かれていました。菜穂子という名前は、おそらく堀辰雄最後の長編小説『菜穂子』から取られたものと思われますが、このあたり宮崎駿監督の特別な思い入れが感じられる気がしますね。
児童文学を愛読し、「アニメーションは基本的に子供の物」と公言してきた宮崎駿監督。ところがこの“最後”の長編作品は「大人向け」に作られています。
『風立ちぬ』の映画化は「スタジオジブリ」の鈴木敏夫プロデューサーの発案によるものでした。ところが当時、宮崎駿監督は「アニメーション映画は子供のためにつくるもの。大人のための映画はつくっちゃいけない。」と猛反対だったそうです。そこで鈴木プロデューサーは宮崎駿監督が普段は戦闘機や戦艦など戦争に関係するものが好きな一方で、でも思想的には戦争は良くないと思っているという矛盾を指摘し「その矛盾に対する自分の答えを、宮崎駿はそろそろ出すべきなんじゃないか。」と説得したそうです。この経緯を経て映画『風立ちぬ』の制作が始まります。
そして宮崎駿監督は『風立ちぬ』制作にあたり、こう言っています。「リアルに、幻想的に、時にマンガに、全体には美しい映画をつくろうと思う。」...続きを見る
関連アイテム
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『風立ちぬ』主題歌「ひこうき雲」も収録。松任谷由実 40周年記念ベストアルバム。
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宮崎駿監督によるカバー挿画も美しい。あとがき「空のいけにえ」も収録。
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