ヴァイグレ&フランクフルト歌劇場/『影のない女』
2015年8月15日 (土)
リヒャルト・シュトラウス:『影のない女』全曲(3CD)
ステンスヴォルト、ホグレーフェ、フリッツ、ウィルソン、バウムガルトナー
ヴァイグレ&フランクフルト歌劇場管弦楽団
ヴァイグレとフランクフルト歌劇場によるオペラ・シリーズにリヒャルト・シュトラウスの大作『影のない女』が登場。2014年の10月と11月にフランクフルト歌劇場でおこなわれた現代風演出の上演をライヴ録音したものです。
キーとなるバラク役にはヴァイグレの『指環』のヴォータンや、ネルソンス、ブルーノ・ヴァイルの『さまよえるオランダ人』のオランダ人役なども歌っていたノルウェーのバリトン、テリエ・ステンスヴォルト(ステーンスヴォル)を起用。心理表現に長けた歌唱で定評のあるベテラン歌手で、フランクフルトでの2003年プレミエ上演でもこのバラク役を歌っていましたが(ちなみにこの上演によってヴァイグレはドイツの音楽誌「オーパンヴェルト」の2003年度年間最優秀指揮者に選ばれていました)、この2014年の上演がオペラからの引退公演になったということです。
皇帝役はバイロイトでもおなじみのドイツのテノール、ブルクハルト・フリッツ、皇后役はアメリカのソプラノ、タマラ・ウィルソン、バラクの妻役はドイツのソプラノ、ザビーネ・ホグレーフェ、乳母役はドイツのメゾ・ソプラノ、ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナーというキャスティングです。
【影の無い女】
『バラの騎士』が『フィガロの結婚』に範をとったと言われるのと同じく、『影のない女』は、やはりモーツァルトの『魔笛』から多大な影響を受けたとされています。
それはたとえば『魔笛』と同じく現実離れしたメルヘンの世界を題材としていることや、「象徴」の手法が多用されている点にもみてとれますが、このオペラは、ホーフマンスタールの台本がたいへんな力作ということもあって、近代作品ならではの複雑で繊細な味わいに富みながらも、全体のスケールはきわめて大きなものとなっているのが特徴でもあります。
作曲時期は1914年から1917年、第一次世界大戦中ということもあってか仕事が絞られ、この作品に集中的に取り組むことが出来たようで、ホーフマンスタールとの数多い書簡のやりとりからもそのことはよく伝わってきます。
数多い登場人物の描き分けの巧みさ、オーケストレーションのみごとさもまさにシュトラウスの絶頂期を示すものと言え、その作曲技法の熟達ぶりは、ホーフマンスタールとの一連の共同作業から生まれた傑作群、『エレクトラ』、『バラの騎士』、『ナクソス島のアリアドネ』、『影のない女』、『エジプトのヘレナ』、『アラベラ』の6作品の中にあっても最高の水準に達しています。
舞台設定は、架空の時代の東方のある国、というもので、体裁はおとぎ話。カルロ・ゴッツィの諸作やゲーテのほか、世界各地の民話や伝説、『千夜一夜物語』などに取材したものです。
台本作者のホーフマンスタール自身が述べているように、モーツァルトの『魔笛』を意識して書かれたため、ウィーンの民衆劇が定型としていた皇帝&皇后のペアに対し、コメディア・デラルテのペアが置かれる予定でしたが、実際にはそれはアラビアの影響を感じさせるキャラクターでもある「染物師バラク夫妻」に変更され、猥雑さや滑稽さよりも、家族愛・人類愛の表現にシフトしたものとなっています。とはいえ予定されていたコメディア・デラルテのペアが持っていた騒々しさが無くなったわけではなく、その役割はここでは、バラクの兄弟たちによって実現されています。
このオペラの数多い登場人物中で、唯一名前があるのがこのバラクというのも何やら象徴的ですが(カイコバートは実際には登場しませんので)、これに女性版メフィストフェレスともいうべき、魔法使いの「乳母」が絡んで、女性版ファウストのような「皇后」と「バラクの妻」の価値観の変質を描いてゆきます。(HMV)
【収録情報】
● リヒャルト・シュトラウス:歌劇『影のない女』全曲 [187:01]
染物師バラク/テリエ・ステンスヴォルト(バリトン)
バラクの妻/ザビーネ・ホグレーフェ(ソプラノ)
皇帝/ブルクハルト・フリッツ(テノール)
皇后/タマラ・ウィルソン(ソプラノ)
乳母/ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー(メゾ・ソプラノ)
伝令使/ディートリヒ・フォレ(バリトン)
若い男の幽霊/ミヒャエル・ポーター(テノール)
鷹の声/ブレンダ・レイ(ソプラノ)
バラクの兄弟(隻眼)/フランツ・マイヤー(バス)
バラクの兄弟(隻腕)/ビョルン・ビュルガー(テノール)
バラクの兄弟(傴僂)/ハンス=ユルゲン・ラツァール(バリトン)、他
フランクフルト歌劇場合唱団
フランクフルト歌劇場管弦楽団(フランクフルト・ムゼウム管弦楽団)
セバスティアン・ヴァイグレ(指揮)
録音時期:2014年10月、11月
録音場所:フランクフルト歌劇場
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
オペラ最新商品・チケット情報
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。
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