激ロック×HMV&BOOKS online vol.105

GENRE：SYMPHONIC METAL
あんきもの多様なエッセンス、チャレンジ精神を盛り込んだ意欲作『evolution』
“美と暴虐”をテーマに据えた前作『Unfinished』は、ヘヴィなエクストリーム感を突き詰めた逸品だった。それを経て、このニュー・アルバムではあんきもが持つ多様なエッセンス、チャレンジ精神を盛り込んだ意欲的な作風に仕上がった。一度聴いただけで耳に残るメロディ、一緒にシンガロングしたくなる高揚感、頭も身体も揺さぶる豊かな攻めで新境地を開拓したアプローチも多い。Fukiのキュート・ヴォイス炸裂のアニソン的な「アマリリス」、アラビアンな旋律で異国情緒たっぷりの「Welcome to Valhalla」、8ビートを用いた「誰が為に」は歌謡メタル的なニュアンスがあり、バラエティに富む楽曲が勢揃い。もちろん従来のメロスピやシンフォニック・メタル調の強力ナンバーもあるので、ご安心を。
荒金 良介 【ライター推薦】

GENRE：LOUDROCK
“見事に混沌たる世界”を体現するニュー・アルバム『怪物園』完成
その名にたがわず、音の面でも歌詞の面でも不穏にしてカオスな空気感が濃厚に漂っている。ポップなメロとノイジーなギターが混在する「Happy Zombies」はコロナ禍よりも前に生まれた曲でありながらそれを思わせるものになっていたことが不思議であるし、「Valhalla」は昨今の危うい世界情勢を予言していたかのような詞の内容と尖ったヘヴィな音像が恐ろしいほどにシンクロするのだ。「Elephant in the Room」で歌われる“見事に混沌たる世界”とは、フィクションとノンフィクションが交錯するなかで描かれる2022年の今そのものを指しているように思えるが、一方で作り込まれた刺激的なサウンドは快感と恍惚を得られるほどにエキサイティング。怪しくも楽しい怪物園へ、ようこそ――。
杉江 由紀 【ライター推薦】

GENRE：HEAVY METAL, THRASH METAL
OUTRAGEがデビュー35周年アニバーサリー盤をリリース
今年、デビュー35周年を記念したドキュメンタリー映画“鋼音色の空の彼方へ”を公開。映画内でもOUTRAGEの楽曲が使われており、本作はメンバー・セレクトによるベスト盤的な内容と言っていい。とはいえ、初代フロントマンを務めた伊藤千豊が歌う「Under Control Of Law」や、未発表ライヴ音源「Edge Of Death」とレア曲も収録。また、注目は新曲「Psycho flowers」、「Summer Rain」の2曲だろう。前者は荒ぶる衝動を叩きつけた疾走ナンバー、後者は鍵盤を導入したスロー曲（名曲！）だが、どちらもNAOKIの歌唱力が俄然光っている。さらにDVDは過去のライヴ映像6本を収録。正直、画像は粗いけれど、それを補って余りあるほどの熱量に悶絶必至だ。
荒金 良介 【ライター推薦】

GENRE：METAL, HARD ROCK
ヨーロッパ・ツアーを成功に収めたBRIDEARが新領域へ踏み込んだ意欲作をドロップ
疫病蔓延の次は侵略危機が勃発。21世紀の世界は予想外な不測の事態に見舞われているが、世相が渾沌とするほど必要になってくるのは、人々を鼓舞するような音楽になってくるのではなかろうか。ギリシア神話における都市の守護を司る女神、アテナが携える聖盾 イージスの名を冠した今作は、今後の世界戦略も見据えたうえでのメッセージ性を強めた英語詞曲が大半を占める仕上がりで、音の面でも二階級特進のレベルで底力を増してきた感が強い。また、全メンバーが作曲に携わる一方、「Greed」では元Janne Da Arcの一員で現在はNicori Light Toursに在籍するkiyo（Key）が曲提供をしている点も要注目でありつつ、何より今作をもって彼女たちが“腹をくくった”ことがこの音からよくわかるはずだ。
杉江 由紀 【ライター推薦】

GENRE：LOUDROCK
リアルなロックを放つ永遠の風雲児、コドモドラゴンがアグレッシヴな新作発表
夜を飛ぶ蛾の存在感と、バンドのことを重ね合わせたうえで生まれたという表題曲に漂う激烈で不穏且つ緊張感のある音像と、そこに絡んでゆく刺激的でキャッチーな旋律。全権コンポーザーとも言うべきハヤト（Vo）の生み出す楽曲を、各楽器隊メンバーが攻めの手練れたプレイで彩っていく様は痛快のひと言だ。チャム（Dr）の揺るぎないリズム・アプローチ、meN-meNの繰り出す卓越したベース・フレーズ、精緻なゆめのギター・ワークは「負け犬」や「MELP」（※Ctype（通常盤）のみ収録）といったc/w曲たちの中でもそれぞれ発揮されているが、結成12年にして未だ前のめりな彼らのアグレッシヴな姿勢は、ある意味で危なっかしくもあり、逆に言えば極めてロックで守りには入らないところに気概を感じる。癖の強さが堪らない。
杉江 由紀 【ライター推薦】

GENRE：MELODIC DEATH METAL
FATE GEARが新章を描くニューEP『Killers in the Sky』リリース
映画や小説にも匹敵する壮大なドラマ性と、ここに来てメロデス要素を強く押し出した音像が融合することにより、ここにはFATE GEARにしか生み出せない異空間が出現したようだ。昨年1月に発売されたコンセプト・アルバムの前日譚にあたる物語を詞で描いていくことになったという今作は、ブックレットにMina隊長（Gt/Composer）自らしたためたストーリーも添えられている。適材適所で3人の個性豊かなヴォーカリストたちをキャスティングしながら描かれる曲たちは、必ずや聴き手を想像の彼方へと誘うことになるに違いない。昨今はサブカル界隈での人気も高く、一方ではメタル・レジェンドたちとも親交を深めているというFATE GEAR。彼女たちの活動領域は、まだまだここから大きく広がっていきそうだ。
杉江 由紀 【ライター推薦】

GENRE：PUNK ROCK, MELODIC HARDCORE
パンクでラウド、独自の道を突き進むSHIMA
ライヴへの衝動を掻き立てる3rdフル・アルバムが完成
SHIMAがコロナ禍を経て作曲に没頭して自身の音楽に向き合った結果、完成したのがこちらの3rdフル・アルバム『FLAKES』だ。今作でも、彼らの持ち味である、勢いとテンション爆上げなラウド×パンクのノリが変わらないのはもちろんのこと、歌詞を大事にしたメロディの組み立てが際立つ楽曲や、ライヴ感のあるお祭りチューンなど、全方位から“これがSHIMA！”と訴え掛けてくる圧のすごいフル・アルバムとなっている。特に「medicine」などは、1曲の中に詰め込まれた情報量の多さに、思わず何度か聴き返してしまう。全体を通して何度も聴いて味わいたくなる作品でもあるので、ぜひ5月から行われる今作を引っ提げてのツアーも併せて、全身でSHIMAサウンドを体感してほしい。
山本 真由 【ライター推薦】

GENRE：MELODIC PUNK
感動を誘うエモメロと弾けるエネルギー。2ヶ月連続リリースの第1弾
エモーショナルなメロディと疾走感のあるサウンドで国内のパンク・シーンをリードする、男女ツイン・ヴォーカル・3ピース・バンドが、ライヴ・シーンを盛り上げるような2ヶ月連続リリースの新EPを発売する。こちらはその第1弾。“SUN”というタイトル通り華やかで元気の出るポップ・パンクがギュッと凝縮されたような1枚だ。心に響くエモメロがたまらないTrack.1、激しさと美しいハーモニーが同居するTrack.2、モッシュピットの活気が目に浮かぶハードなナンバーTrack.3、王道感のあるメロコアTrack.4と、様々な顔を見せるフォゲミの魅力がそれぞれ方向性の異なる4曲で表現されている。明日への活力になる今作を聴きながら、ぜひ翌月リリースの姉妹作『MOON』も楽しみにしていよう。
山本 真由 【ライター推薦】

GENRE：METAL, LOUDROCK
無期限活動休止を発表したMary's Bloodが
燃えたぎる鋼鉄魂を確かに刻む、初めてにして究極のベスト・アルバム
姐御たちの鋼鉄魂は、ここに確かに刻まれた。今思えば、昨秋に発表された最新オリジナル・アルバムにバンド名が冠されていたということは、あの時点で、彼女たちはすでにひとつの決断をくだしていたのかもしれない。始動からは約13年、現体制となってからは10年を迎えようとするなか、今春限りで無期限活動休止となってしまうことを残念に感じるのはもちろんだが、2012年発表のミニ・アルバム『SCARLET』に収録されていた「Burning Blaze」を手始めにして、このベストを聴いて改めて思うのは……つくづくMary's Bloodはいつの時も気高く、それでいて野性的でもあり、そして何よりも燃えたぎる鋼鉄魂に衝き動かされてきたバンドであったのだな、ということ。女王の称号よ、どうか永遠に。
杉江 由紀 【ライター推薦】

GENRE：PROGRESSIVE METAL, LOUDROCK
テクニカルな表現力の高さで突き抜けるulma sound junction、メジャー・デビュー
沖縄県石垣島発の4人組が5曲入りのメジャー1st EPを発表。冒頭を飾る「Modern Bleed」は新曲で、カオティックなイントロからラウドに振り切った攻撃力抜群のナンバーだ。シャウトを織り込みながら、サビではキャッチーなメロディが飛び出し、聴き手の心をガッチリ掴む。プログレッシヴ且つリリカルなインスト・パートも聴き応えがあり、目くるめく曲展開で惹きつける構成もさすが。残り4曲は既発曲のリレコーディングで、ライヴの定番曲を収録。カオティック・ハードコアの手法を取り入れた「Utopia」は、DISTURBEDのDavid Draiman風の歌い回しがクセになる曲調だ。9分超えの「Idea」は、エモーショナルな歌声でストーリー性豊かに聴かせ、バンドの表現力の高さを提示している。
荒金 良介 【ライター推薦】

GENRE：ALTERNATIVE ROCK
悠介（lynch.）＆松本明人（真空ホロウ）のユニット・プロジェクト“健康”
その世界観を多角的に捉えられる初アルバムが到着
lynch.の悠介（Gt）と真空ホロウの松本明人（Vo/Gt）によるユニット・プロジェクト、健康の1stアルバムがついにリリース。松本が感銘を受けた1本の映画のストーリーと、その登場人物の背景や心情をもとに制作された4曲のインスト曲含む全14曲は、鍵盤／電子音をふんだんに使用し浮遊感たっぷりで、松本の囁くような、時に叫ぶようなヴォーカリゼーションには、感情の動き、物語の展開を可視化させるかのごとき没入効果がある。初回限定盤には本作のラストを飾る「未来」のMVと、昨年9月19日に行われた配信ライヴ“1st Live Streaming『健診 chapter #0』”の映像も収録。和気あいあいとしたMCも挟み、彼らが表現する世界観を多角的に捉えることができる作品に仕上がった。
内堀 文佳 【ライター推薦】

GENRE：MIXTURE, POP, LOUDROCK
運命に左右されない零[Hz]のアティテュードを明らかに記す
約3年ぶりのフル・アルバム『ZODIAC』堂々完成
星たちの巡りが季節の移ろいや宇宙のことわりを教えてくれるのだとしても。過ぎゆく時の中で自らの進む道を定め、確かな足取りで進んでいくことまでをも星に託すことはできない。約3年ぶりのフル・アルバムはシングル曲たちと、Leo（Gt/Prog）の冴えたメイン・コンポーザーぶりが発揮された新曲たちが目一杯詰め込まれた。秀逸アンサンブルが光る「raison d'etre」、派手なEDM感に彩られた「enigma」、アッパーな音像の中でROYの突き抜けるような歌がハジける「The DOPERA」（A Type）、全能の神にたてつくような“諦める事を諦めてやればいい”という詞が刺さる「ZEUS」（B Type）など、運命がどうあれ零[Hz]はかくありきという姿勢が明示されている様は実に頼もしい。
杉江 由紀 【ライター推薦】