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Top 100 Albums - No.70

Monday, March 15th 2004

ローリン・ヒル「ミスエデュケーション(The Miseducation Of Lauryn Hill」)(98年発表)を聴くと時々、へこむ。だってあまりにも完璧。ピュアでリアルで真っ正直。女性として母として、そして一人の人間として、自分自身の全てさらけ出した彼女の歌は、聴いていて胸にグサグサ突き刺さってくる。自分はどうだろう。一点の曇りなく真直ぐに生きてるんだろうか。

男性優位のヒップホップ・シーンにおいて、歌もラップも自由自在に操るローリンの存在は、ブラック・ミュージック・シーンの流れを大きく変える役目を果たし、後のオーガニック・ソウル/ネオ・ソウルの隆盛のきっかえを与えた。歌えるラッパ−という点ではミッシー・エリオットの方が早いが、メッセージ性を持ったリリックという点ではローリンは遥かに大きな影響力を持っている。「ミスエデュケーション」は90年代の最重要作品であり最高傑作だ。このアルバムの存在なくしては今のヒップホップ/R&Bシーンはあり得なかった。

フージーズの中心人物ワイクリフの力を借りず、歌詞・曲・アレンジと殆どローリン自身で手がけた本作は、ソウルやゴスペル、ファンク、そしてレゲエとローリンが子供の頃から体験してきた音楽が自然と浮き彫りになった作品だ。ニュージャージー州の中流家庭に生まれ、幼い頃から西インド諸島出身者やアフリカンのコミュニティの近くで育ったローリンは、教会の聖歌隊などで歌いながら、ソウル、レゲエ、ソカといったいろいろな音楽の影響を強く受けたという。彼女の音楽の胆はヒップホップにありながら、ソウルやレゲエが入り交じってくるのはごくごく自然のことなのだ。

特にレゲー好きの当方にとっては、このアルバムで垣間見られるレゲエ的部分は見逃せない。ボブ・マーリィの息子ローハンとの間に息子を儲けザイオン君と名付けるなど聞けば、ローリンのジャマイカン・カルチャーや音楽への興味のほどは伺い知れるが、"Concrete Jungle"をからめた"Forgive Them Father"やジャマイカのオーティスと呼ばれゴスペリッシュなレゲエの代表的アーティストのトゥーツ・ヒバート率いるメイタルズの"Bam Bam"を使った"Lost Ones"等キングストンにあるボブ・マーリィ・スタジオでレコーディングしていることや、ボブ・マーリィのバックで活躍していたアール・チナ・スミスやアル・アンダーソン、エンジニアのエロール・ブラウン、サックス奏者のディーン・フレイザーやベーシストのクリストファー・メレディスといった80年代から活躍しているミュージシャンが参加しているだけで胸が踊ってくる。

レゲエだけでなく、ローリンが特に好んで聴いていたスティーヴィ−・ワンダーダニー・ハサウェイのようなブラック特有のヘヴィで暗いマイナー・コードがたくさん入ったようなソウル・ミュージックのフレイヴァも多く見受けられる。例えば、ディアンジェロ参加のセンシュアルな"Nothing Even Matter"ではカーティスを意識した作りだし、70年代スティーヴィー調の"Every Ghetto, Every City"やゴスペルライクな"To Zion"、シングルになった"Doo Wap(That Thing)"など、柔軟な解釈で様々な音楽をばらし、新たなスタイルの音楽へに再構築することに成功している。

ただこういったサウンド面での成功だけでこのアルバムが世界中で1200万枚も売れるわけはないのだ。多くの人に受け入れられた理由、それは聴く人の胸にダイレクトに伝わるメッセージ性だろう。強烈なスクラッチと緊張感漂うラガマフィンが特徴的な"Lost Ones"やDJプレミアと共に書いたというクールなビートの"Final Hour"では、音楽業界における金儲け主義(パフ・ダディのこと?)に対する挑戦的な言葉を並べ、サンタナがメランコリックなギターで参加した"To Zion"では息子のことを、"Ex-Factor"やメアリーJ.ブライジと見事な掛け合いをした"I Used To Love Him"では恋愛についてと、実に私的なテーマをためらうことなくさらけだしている。

ローリンは自分の歌についてこう言っている。
「どんなにスウィートな歌でも、天使のように歌っていても、ベースとドラムスにはきちんとビートをキープしてもらわないといけないのよ。 力強くビートをキックしていて欲しいの。そうすればストリートのみんなも歌えるでしょう?私は例えばゴスペルの持つメッセージや忠誠さが込められていて、なおかつストリートの子供たちの心にまで届くような歌をつくりたいの。ヒップホップ世代でそういうタイプの歌から縁遠くなってしまった子供たちもリーチしたいのよ」
ローリンは知っている。自分のメッセージがどのようにしたら伝わるか、ただ叫ぶだけでは受け入れられない。音楽性とメッセージ性、両方を満たしていなければ人の心には訴えることができないということをよく知っているのだ。

アルバム・タイトルは、ブルックリンのゲットーで育ち独学で政治家となった青年の半世紀を綴ったノンフィクション小説『The Education of Sonny Carson』からと、もう一つ「Miseducation」、社会に教え込まれた常識をまず解き放つ、ということからきているという。教わったことが全て正しくないとわかると、人間は自分の人生をもう一度見つめなおす時がくるというのだ。

そうか。だから私はこのアルバムを聴くと妙に考え込んでしまっていたのか。いつもローリンからのメッセージを受け取っていたんだ。「ミスエデュケーション」はローリンを映し出した1枚の鏡のような作品であると同時に、その鏡は聴く人自身をもクリアに映し出す役目をしていたのだ。もし貴方が人生の岐路に立った時、逃げが許されず選択することを迫られた時、ローリン・ヒルの「ミスエデュケーション」を聴くといい。きっと、自分のとるべき道が自ずと見えてくるはずだ。
* Point ratios listed below are the case
for Bronze / Gold / Platinum Stage.  

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Miseducation Of

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Miseducation Of

Lauryn Hill

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Release Date:24/August/1998
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