TOP > Music CD・DVD > News > Dance & Soul > Top 100 Albums - No.65

Top 100 Albums - No.65

Saturday, March 20th 2004

ハッキリ言ってライヴなんてものはその場にいなければ意味がないと思う。目耳でステージを楽しむのはもちろんだが、まわりの観客の雰囲気や、会場の状況、場外だったら天気や気温など、人間の五感全てを使って感じるのがライヴの醍醐味だ。だからどんな有名アーティストのライヴ・アルバムを聴いても、その場を生で体験した聴衆の感覚にはどうしても追いつけっこないし、満足いくようなライヴ・アルバムにはなかなか出会えたことがない。しかし、このアルバムだけは違う。もし一枚だけベスト・ライヴ・アルバムを選べと言われたら、サム・クック「Live At The Harlem Square Club 1963」か、ダニー・ハサウェイ「ライヴ」かで迷うくらい究極の一枚だ。

ダニ−・ハサウェイカーティス・メイフィールドスティーヴィー・ワンダーマーヴィン・ゲイらと並ぶニューソウルの旗手としてよく知られているアーティストである。1945年シカゴに生まれ、幼少期をセントルイスで過ごす。幼少期から教会と密着した時間を過ごし一時は説教師も目指していたが、ハワード大学卒業後からシカゴに拠点を移し、カーティス・メイフィールド主宰のカートム・レーベルでスタッフとして働くようになる。その一方、チェスと契約しバック・ミュージシャンとして活動していた。

69年、キング・カーティスとの出会いが彼の運命を変える。キング・カーティスの勧めでダニ−はアトランティック入りし、どこのレコード会社もリリースすることをためらった"ゲットー"を吹き込む(暴動を引き起こすような曲ととらえられていたそうだ)。1970年、デビュー・アルバム「エヴリシング・イズ・エヴリシング 新しきソウルへの光と道」を発表。その翌年、録音されたのが本作「ライヴ」である(発表は72年)。

71年の8月28日、29日にLAのトラバドールで2回に渡って行われたライヴは、延べ30曲近くになったが、その中からアルバム最初の4曲をチョイスしている。ちなみにこの時のライヴを赤い鳥のレコーディングのためロスに来ていた村上“ポンタ”秀一が偶然目撃している(うらやましい!)。ところが、ダニ−はそれだけでは満足せず、同じ年の10月27日から29日にNYのビター・エンドで7回のステージの模様を録音した。ビター・エンドは現在NY最古のライヴハウスの一つとして知られ、チャートを賑わせるような多くの有名アーティストが出演している。あの平井堅のアルバム「Ken's Bar」のジャケットのロケ地もビター・エンドであり、本作中にもあるキャロル・キングの"きみの友だち(You've Got A Friend)"のカヴァーをダニ−の愛娘レイラ・ハサウェイとデュエットするなんて粋なことをしている。またカーティス「ライヴ」もここで演奏したものだ。

ロスでのライヴではマ−ヴィン・ゲイのカヴァー"愛のゆくえ(What's Goin' On)"に続く"ゲットー(Ghetto)"が聴きどころだ。観客の大合唱はまるでゴスペルのステージのよう。アルバム収録曲よりも遥かに力強くフレキシブルに演奏するバック・バンドにダニ−のエレピと伸びやかな歌声が呼応していく。ジャズに精通していたダニ−の柔軟な発想とフィル・アップチャーチ(彼はギターだけでなくベースでも参加している)らのバック・メンバーの高い技術が見事に融合した素晴らしい名曲・名演だ。イントロが始まるなり観客の熱狂的な叫びが入る"きみの友だち(You've Got A Friend)"はこの作品の中でも人気の高い一曲だろう。数多くのアーティストがこのキャロル・キングの超有名曲をカヴァ−しているが、ベストは間違いなくダニ−のライヴ・ヴァ−ジョンだ。泣ける。

NYのライヴではギタリストがコーネル・デュプリに替わり彼らしいブルージーなギターが味わえる。中でも"きみの友だち"の続編的な"ウィ・アー・スティル・フレンズ(We're Still Friends)"の咽び泣くようなフレージングの素晴らしいこと! 最後の"エヴリシング・イズ・エヴリシング(Voices Inside(Everything Is Everything))では、自由奔放でリラックスしたバンド・サウンドが堪能でき、ダニ−とバック・メンバーの音楽に対する愛情と演奏することの喜びがひしひしと伝わってくる。聴いているこちらまで嬉しくなってくるような1曲だ。

こんなに生命力溢れるライヴ・アルバムを作ったダニ−だが、1979年1月13日深夜、セントラル・パークの見えるエセックス・ハウス・ホテルの15階から身を投げ、自ら命を断った。当時、公民権運動の成果により黒人が徐々に復権していく傍ら、低学歴で貧しい黒人層が急速に増加していくといった黒人内部の二極化問題を、ダニ−が苦しんでいたことが原因だとも言われているが、本当のところはどうだろう。そんなに大それた理由が彼の中にあったのかどうかは今となってはわからないが、悲劇的な死の対極をなすような「ライヴ」を聴く度、彼がブラック・コミュニティの明るい未来を担うべき存在であったことがよくわかる。そして、ダニーが残した一曲一曲に、迸るような「生」と「光」を感じずにはいられない。
* Point ratios listed below are the case
for Bronze / Gold / Platinum Stage.  

featured item

Live

CD Import

Live

Donny Hathaway

User Review :5 points (27 reviews) ★★★★★

Price (tax incl.): ¥1,320
Member Price
(tax incl.): ¥1,148

Release Date:23/September/1996
usually instock in 1-15days

  • Point x 1
    Add to wish list

%%header%%Close

%%message%%

Top 100 Best Album The List So Far...