ソフィー・デルヴォー&モーツァルテウム管
ファゴット協奏曲集
ウィーン・フィル首席ファゴット奏者、ソフィー・デルヴォーが、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団を吹き振りしたファゴット協奏曲集。
有名なモーツァルトのほか、モーツァルト的な素材をふんだんに使用した曲調が魅力的なフンメルとヴァンハルの作品を収録。
独ピュヒナーの名器「スペリオール」の豊潤な音を駆使するソフィー・デルヴォーの見事な演奏を味わえるアルバムです。
Berlin Classicsからは昨年ソロ・デビュー・アルバム
「impressions」 が発売されていたので、今回のアルバムはセカンド・アルバムということになります。
【ベルリン・フィル → ウィーン・フィル】
ソフィー・デルヴォーは、ウィーン・フィルとウィーン国立歌劇場管弦楽団の首席ファゴット奏者を務めながら、ソリスト、室内楽奏者、教育者としても活動する人気のファゴット奏者。
ウィーン・フィルの前はベルリン・フィルの首席コントラファゴット奏者兼ファゴット奏者だったという華麗なキャリアの持ち主です。
【名前】
「デルヴォー」という姓は、2018年の8月に、フランス人ホルン奏者でコンセルトヘボウ管弦楽団首席奏者でもあった作曲家のフェリックス・デルヴォーと結婚してから使用されており、それ以前の姓は「ダルティガロング」でした。
【使用楽器】
ソフィー・デルヴォーは、ドイツの楽器メーカー「ピュヒナー」の「ダークで丸みのある音」が好きなそうで、「モデル・スペリオール」や「モデル23コンパクト」などを愛奏しています。
しかし、ベルリン・フィルでもウィーン・フィルでも、ファゴット仲間からは、業界の有名ブランドである「ヘッケル」を使用するよう勧められ、彼女もヘッケルや他のファゴットを試してもいます。
それでも、調和の点でもまったく問題ないことから彼女の考えが変わることはなく、結果的に、約75年ぶりにヘッケルを吹かないウィーン・フィルのファゴット奏者になったということでした。
なお、コントラファゴットについては、ヘッケルを使用しているとのことです。
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アルバム・リリースにあたって
Berlin Classicsのセカンド・アルバム発売時の言葉です。
「ヴァンハルのファゴット協奏曲第2番の世界初録音を含む、私の指揮者としてのデビュー・アルバムです。ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団は、このレコーディングのための完璧なパートナーです。素晴らしい伝統を持つこのオーケストラは、大きなエネルギーで私に率直に応えてくれました。このプロジェクトは、私の音楽キャリアにとって大きな意味を持つ素晴らしいものです。いつも私を信じて支えてくれる素晴らしい人々と、この音楽を聴いて私たちのプロジェクトの重要な一部となってくれるすべての人に感謝しています。」(ソフィー・デルヴォー)
参考までに、Berlin Classicsのソロ・デビュー・アルバム発売時の言葉も載せておきます。ソフィーによる内容紹介はこのページの下部に載せてあります。
「正直なところ、2020年3月に、他のことをやったほうがいいのではないか、と思う時期があったのですが、演奏を再開してからは前向きな気持ちになれました。警告があっても、マスクをしていても、コンサートに来てくれる人がいる。コロナ危機の前に比べれば少ないかもしれないけれど、音楽がないと生きていけないという人たちは、ちゃんといる。私たちはこの人たちのために演奏している、この人たちはそれを必要としている、だから私たちは演奏し続けなければならない、と私は前向きに考えています。もちろん、この数か月は大変な時期で、キャンセルのたびに傷つきましたし、そしてキャンセルはたくさんありました。しかし、このCDを見てください。今回ばかりは、ゆっくり練習できる時間と場所があったのです。」(ソフィー・デルヴォー)
ソフィー・デルヴォー 年表
【ヴェルサイユ拠点】
●1991年7月25日、パリ南西部、ヴェルサイユ近くのクラマールに誕生。父親は数学者でエンジニア、母親はギター教師という家庭。
●1996年、5歳でピアノを始めますが、2週間でレッスンを中断。
●母にギターを教わります。
●2001年、10歳でクラリネットを学び始めています。1人で演奏するのではなく、誰かと一緒に演奏したいという理由でした。
●2003年、12歳のときにフランス式ファゴット「バソン」に夢中になり、熱心に練習。その結果、地元のヴェルサイユ音楽院では半年学んだ段階で、次の過程に進める状態になっていました。
【リヨン拠点】
●家族と共に、パリの南南東400kmほどのところにあるリヨンに転居。
●リヨン地域音楽院に入学。
●2008年、17歳の時にはリヨン国立音楽院に入学。カルロ・コロンボとジャン・ピニョリという優れた教師に出会い、彼らがドイツ式のファゴットを教えていたことから、ソフィーは楽器をバソンからファゴットに変更しています。
【ベルリン拠点】
●2011年、ベルリン・フィルのカラヤン・アカデミー(オーケストラ・アカデミー)に奨学生として参加し、ダニエレ・ダミアーノ(ファゴット)、マリオン・ラインハルト、マルクス・ヴァイトマン(コントラファゴットバス)に師事。
●2011年、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学に入学、のちに修士号を取得。
●2012年、カラヤン・アカデミーでの勉強を終えた後、ベルリン・フィルのコンクールに参加して優勝。
●2013年5月1日に首席コントラファゴット奏者(兼ファゴット奏者)として入団。順調な音楽家生活を送ります。
●2014年2月、シュトゥットガルト放送交響楽団とフンメルを演奏。
●2014年5月、サンクトペテルブルク、ミュージカル・オリンパス・フェスティヴァルに出演。
●2014年7月、フィンランドのキミト島音楽祭に出演。
●2014年11月、フランコニア音楽祭に出演。
【ウィーン拠点】
●2015年、ウィーン国立歌劇場管弦楽団のオーディションがあることを知り、3週間に渡ってオーディションの準備のための練習に明け暮れ、見事に合格。ミヒャエル・ヴェルバの後任でした。
●2015年、ウィーン国立歌劇場管弦楽団に首席ファゴット奏者として入団。膨大なレパートリーの習得に励みます。
●2016年5月、フローニンゲン・ファゴット・フェスティヴァルにゲスト・アーティストとして参加。
●2017年6月、武蔵野市民文化会館で、日本初のリサイタル。
●2017年9月、ウィーン・リード・クインテットのメンバーとして、
レコーディング に参加。ラモー:「勝利」、モーツァルト:幻想曲 K.608、ラヴェル:「クープランの墓」を演奏。
●2018年4月、トゥールーズ・ウィンド・オーケストラとトマジのファゴット協奏曲を演奏。
●2018年10月、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者として正式に登録。
●2020年、ウィーン市立音楽芸術大学の教職に就きます。
●2021年、ソロ・デビュー・アルバム
「impressions」 を発売。
●2021年、
モーツァルトほかのファゴット協奏曲集 を発売。
●2022年、
J.C.バッハのファゴット協奏曲とM.ハイドンの交響曲 を発売。
●2024年、
ヴィヴァルディのファゴット協奏曲集 を発売。
【コンクール】
●2010年、「アウディ・モーツァルト・ファゴット・コンクール」第1位(イタリア)。
●2010年10月、「ロッシーニ・ファゴット・コンクール全国大会」第1位(イタリア)。
●2010年11月、「カール・マリア・フォン・ウェーバー・ファゴット・コンクール」第1位(ポーランド)。
●2011年5月、「国際アカデミック・オーボエ・ファゴット・コンクール」第1位(ポーランド)。
●2011年、「クルーセル国際ファゴットコンクール」第2位(フィンランド)。
●2012年10月、「ミハウ・スピサク国際ファゴット・コンクール」第1位(ポーランド)。
●2013年4月、「ムーリ・コンクール」第2位(スイス)。
●2013年9月 「ARDミュンヘン国際コンクール」第2位、観客賞(ドイツ)。1位の出にくいことで知られる難関で、1位なしの2位を、小山莉絵と分け合い、ソフィーは観客賞を、小山莉絵は委嘱新作最優秀賞を獲得(小山莉絵はドイツ・カンマーフィル首席奏者になります)。
●2014年10月、「ボン・ベートーヴェンフェスト」で「ボン・ベートーヴェン・リング」受賞(ドイツ)。44.3%の票を獲得
【ソリストとして共演したオーケストラ】
●バイエルン放送交響楽団(ジョリヴェット協奏曲)
●シュトゥットガルトSWR交響楽団(フンメル協奏曲)
●ミュンヘン室内管弦楽団(ヴィヴァルディ協奏曲)
●ウィーン室内管弦楽団(ストラウス協奏曲)
●ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団
●リヨン国立管弦楽団
●南西ドイツフィラルモニック管弦楽団(モーツァルト協奏曲)、他
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ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団
1841年、「大聖堂音楽協会とモーツァルテウム」としてザルツブルクに設立。宗教音楽演奏を担うオーケストラとして発足。一時はモーツァルテウム音楽院に所属していましたが、1938年に音楽院から独立して、プロのオーケストラとしての活動を開始。
1958年にザルツブルグ州とザルツブルク市の運営団体となり、コンサートのほか、ザルツブルク州立劇場での演奏会も担当。
ベルンハルト・パウムガルトナーやレオポルト・ハーガーによって名声を確立し他のち、ハンス・グラーフ、ユベール・スダーン、アイヴァー・ボルトンらが首席指揮者を務めてきました。
近年は客演指揮者にトレヴァー・ピノックやジョヴァンニ・アントニーニらを招いてピリオド風な演奏もおこなうようになり、2017年からは古楽に強いイタリアのヴァイオリニストで指揮者のリッカルド・ミナージが首席指揮者を務めています。
こうした環境の中で、モーツァルテウム管弦楽団はピリオドもモダンも完全に消化し、説得力のある演奏を聴かせることができるオーケストラに進化しています。特に、得意のモーツァルトやその時代の音楽での演奏は、細部に至るまで素晴らしいものとなっています。
コンサートマスター:フランク・シュタードラー
ザルツブルクに近いバイエルン州南東部のルーポルディングで生まれたフランク・シュタードラーは、1999年以来、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団のコンサートマスターを務めており、今年で23年目となります。
父親からヴァイオリンを学び、ザルツブルクのモーツァルテウムではヘルムート・ツェートマイアーに師事したのち助手となり、その後、ルッジェーロ・リッチ、トーマス・ブランディスらにも師事しています。
シュタードラーは弦楽四重奏団「シュタードラー・カルテット」を主宰しており、そちらでは現代音楽を中心に活動。CDもラッヘンマンやカリツケ、チェルハの作品などをリリースしています。
収録情報 (トラック・リスト)
●モーツァルト:ファゴット協奏曲 変ロ長調 KV 191 [16:25]
1. I. Allegro 06:39
2. II. Andante ma adagio 05:50
3. III. Rondo. Tempo di Menuetto 03:56
●フンメル:ファゴット協奏曲 ヘ長調 [22:21]
4. I. Allegro moderato 10:43
5. II. Romanza. Andantino e cantabile 05:31
6. III. Rondo. Vivace 06:07
●ヴァンハル:ファゴット協奏曲第2番 ハ長調 [20:06]
7. I. Allegro moderato 07:26
8. II. Adagio cantabile 07:04
9. III. Finale. Allegro 05:36
ソフィー・デルヴォー(ファゴット、指揮)
ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団
コンサートマスター:フランク・シュタードラー
録音時期:2021年
録音場所:ザルツブルク、モーツァルテム管弦楽団オーケストラハウス
録音方式:デジタル(セッション)
プロデューサー:マルティン・ザウアー(ベルリン・テルデックス・スタジオ)
エンジニア:トーマス・ベースル(ベルリン・テルデックス・スタジオ)
スポンサーシップ:医療法人 葵鐘会
音楽について
【モーツァルト:ファゴット協奏曲 変ロ長調 KV 191】
管楽器に未知の独立性を与え、変化に富んだ洗練されたオーケストラの作曲スタイルで名声を得たのがヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)でした。
ザルツブルク生まれの作曲家は、3度目のイタリア旅行から帰国したわずか18歳のときに、管楽器のための最初の協奏曲を書きました。
この協奏曲変ロ長調 K191はファゴットのために作られたもので、その後、ファゴットの作品の中で最も有名で、最もよく演奏される作品となっています。
モーツァルトらしい軽快でキャッチーな曲調と、晦渋なパッセージが混在し、素速い走句と渦巻くトリルが連鎖。
中間楽章はリリカルで夢のような性格を持っていて、12年後、モーツァルトはこの楽章の主題を、オペラ『フィガロの結婚』第2幕冒頭のアリア「愛の神よ、安らぎを与えたまえ」に再利用しています。
モーツァルトはファゴットのための協奏曲をあと3曲書いたという噂があり、5曲という資料もあります。とはいえ、現存するのはK191だけです。
ソフィー・デルヴォーの新しいアルバムは、この作品で開始されます。彼女は実はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のソロ・ファゴット奏者ですが、今回のアルバムはザルツブルクのモーツァルテウム管弦楽団と一緒に録音しています。このオーケストラの設立に関わったのは、ほかでもないモーツァルトの未亡人コンスタンツェであり、オーストリアの作曲家の音楽は、彼らの血の中にあるといえます。
このアルバムでは、オーケストラは小さめの編成で演奏し、ソリストは全奏部分を自ら指揮しています。これには大きな責任があり、楽団を見渡し、耳を澄ませ、細心の注意を払わなければなりませんが、同時に、新しい自由をもたらし、創造性と情熱をかき立てるものでもあります。
そして、オーケストラの前に立って演奏するとき、ソフィー・デルヴォーは、それが非常に親密な絆を生み出すと認めています。
【フンメル:ファゴット協奏曲 ヘ長調】
ヨハン・ネポムク・フンメル(1778-1837)は生前、作曲家としてよりも、ピアノのヴィルトゥオーゾとして名を馳せた人物です。
彼はウィーンでモーツァルトから無償で教えを受け、家にも住まわされていました。
その後、フンメルは多くの演奏旅行をおこなって国際的に知られるようになり、1820年代には演奏会のプログラムに彼の名前が頻繁に登場していますが、死後はすぐに忘れ去られています。
フンメルのレパートリーの中心はピアノでしたが、作曲活動はピアノだけにとどまらず、ファゴットの大協奏曲ヘ長調は、今日でもファゴットのレパートリーとして人気があります。
この曲は、モーツァルトの協奏曲と同様、ウィーン古典派の様式に則って、繊細かつ可憐に作曲されていますが、穏やかで情緒的な中間楽章には、ロマン派的な音楽表現も見受けられ、ロンド・フィナーレの主旋律は民族音楽に由来する踊りの旋律が展開されてもいます。
モーツァルトやフンメルが作曲したファゴット協奏曲は、1800年前後に非常に人気のあるジャンルの一つでした。
特にドイツ、ボヘミア、オーストリアでは、カール・マリア・フォン・ウェーバー、ヨハン・クリスチャン・バッハ、ヨーゼフ・ハイドンなどの作曲家が、このようなソロ協奏曲を数多く書いていましたが、多くは失われています。
これらの作曲家たちは、この楽器の豊かな音色を高く評価し、曲の中にメロディアスなラインを描き出し、世界中でその名声を博している一流のファゴット奏者の技量とニーズに合わせてカスタマイズしていました。
今日、それらの協奏曲がどのような形で演奏されたのかはわかっていません。なぜなら、ソリストたちは急速に増加する演奏会に直面していたからです。
ファゴットに関する楽譜が急速に増え、ソリストはますます技術的、音響的な困難に直面するようになります。
アンバランスな音色や、速いテンポでのレガート・パッセージの出しにくさには耐え難いものがありました。
1830年代、楽器職人のヨハン・アダム・ヘッケルは、これらの問題を詳細に検討し、ファゴット奏者のカール・アルメンレーダーとともに、最初の改良を試みることになります。
キーの追加や穴開けによって音域を広げ、複雑なトリルも問題なく演奏できるようになり、ファゴットは音楽の要求に応えられるようになったのです。
【ヴァンハル:ファゴット協奏曲第2番 ハ長調】
ヨハン・バプティスト・ヴァンハル(1739-1813)もまた、当時を代表する作曲家でした。シャフゴッチ伯爵家の農民の子として生まれた彼は、やがてシャフゴッチ伯爵夫人の援助により、ウィーンの音楽界に身を置き、ヴァイオリニスト、ヴァイオリン教師、作曲家として卓越した名声を確立。
彼の作品は、聖楽や器楽のあらゆるジャンルを網羅しており、現在入手可能なのはそのごく一部に過ぎません。
3つのファゴット協奏曲のうち、二重協奏曲は珍しい楽器編成で特に人気を博しました。ファゴットとオーケストラのための協奏曲第2番ハ長調は、楽器編成、形式、作曲スタイルがモーツァルトのファゴット協奏曲に似ています。
この古典的な3楽章の作品には、ヴァンハルの好みがよく表れています。伸びやかな主題、流れるようなメロディー、心地よいイントネーションで表現し、聴衆の好みに一致させています。
ヴァンハルの演奏家としての最後の姿は45歳のときで、モーツァルト、ハイドン、カール・ディッタースドルフとともに、ウィーンで開かれた四重奏曲の夕べに参加したもので、伝説とされています。
構造的な変化により、現代のファゴットは非常に豊かな倍音を持ち、その結果、色とりどりの音色を奏でることができるようになっています。つまり、ファゴットという楽器につきものの、おじいさんの鼻歌のような響きは過去のものとなり、ウィーン古典派時代の明るく爽快な音楽、ドラマチックな爆発を好む音楽、そしてジャズの物悲しい音色が、ファゴットに同居するようになっています。
このセカンド・アルバムでは、初演曲とスタンダード2曲を収録し、ファゴットの印象的な音色と幅広いレパートリーについて耳を研ぎ澄ます機会を提供しています。(ライナーノーツより抄訳)
デビュー・アルバム 「impressions〜ファゴットとピアノのための作品集」
ソロ・デビュー・アルバム
「impressions」
ファゴットは面白い楽器だと思われがちです。しかし、ファゴットは単なる陽気なピエロではないのです。ファゴットの音色のすばらしさ、歌のすばらしさを伝えたいと思い、どうしたらそれが実現できるのか?
ファゴットはエキゾチックな楽器で、あまり知られていない楽器です。もし、リスナーが知らない曲ばかりを演奏していたら、一度に受け止めるにはちょっと無理があったかもしれません。
そこで、私がフランス人女性で、フランス出身、そしてピアニストもフランス人である、というアイデアを思いつき、それに見合ったアルバムを作りたいと思いました。
サン=サーンスのソナタ は、私の大好きな曲のひとつです。彼が85歳になっても作曲を続け、これを残してくれたのは幸運でしたね。この曲は、ファゴットのレパートリーの中で最も高い位置にある曲のひとつです。
ファゴットの音色は、幸せなのか悲しいのか、まるで夕焼けのようだとも言われています。楽器にとっても、私個人にとっても、このソナタはとても重要で、コンサートでは100回以上は演奏しているはずです。
私たちファゴット奏者はソナタに恵まれているんです。この曲は決して演奏が簡単というわけではなく、最低音から最高音まで楽器のあらゆる面が探求されており、ヴィルトゥオーゾ性もあり、緩やかなパッセージもあり、あらゆる要素が含まれています。
ドビュッシーの「美しき夕暮れ」 は、ヴァイオリンやチェロなどに編曲された曲ですが、ここでは男性の声の感じがよく出ています。ファゴットが歌えるんだ、どうやって歌うんだ、とわかるように演奏しようとしました。「美しき夕暮れ」は自分でファゴット用にアレンジしたのですが、オクターヴのパッセージがちょっと難しくて、テキストに合うようにしなければならなかったんです。
「月の光」は、ファゴットとしては非常に高い音域で、月光のような素晴らしい響きを出すことができます。
フォーレの「夢のあとで」 も、とても親しみやすい曲です。この曲はどの楽器でも録音されているので、ファゴットで演奏してみようかと思ったんです。「夢のあとで」は、リサイタルのアンコールで演奏することが多いですね。素晴らしいフレーズ、壮大なライン、ドビュッシーとは異なる音域、しかし同じように美しい。夢から覚めるような特別な感覚を得るには、深い優しさをもって演奏しなければなりません。
ラヴェルの「ハバネラ形式の小品」 も私が編曲した曲で、原曲のスコアからほぼそのまま独唱とピアノのために演奏することができます。ラヴェルやフォーレといったフランスの印象派は、音と特別な関係を持っています。この音の透明性、それは純粋で、とても繊細で、しばしばとても柔らかいものでなければなりません。
レイナルド・アーンの名前はあまり知られていないかもしれませんが、彼の
「クロリスへ」 はよく知られています。この曲の演奏は、リヨンでの古い先生だったカルロ・コロンボに私が捧げたものです。彼は「クロリスへ」をアレンジし、いつも熱心に聴いていました。彼のために演奏することは、私にとって重要なことで、彼は音について知るべきことをすべて教えてくれました。私は、彼の学校で学べたことにとても感謝しています。
CDの最後にブートリーの作品
「アンテルフェランス第1番」 が収録されていますが......。この曲は、このアルバムの中で最もマッドな作品です。私の考えは、「素晴らしい響きを持つ曲はたくさんあるけれども、その中でも特にロジェ・ブトリの作品を紹介したい」というものでした。ラジオを聴くように音楽を聴いていると、どういうわけか正しく聞こえない周波数があるんです。だから次の局へ行くと、テーマはあっという間に変わり、ジャズの影響もある。非常に現代的なパッセージで、ハーモニーもまったく変わってしまう。コンサートでは、いつもそれがとてもよく伝わってきます。私たちはこの曲を練習し、慣れ親しみ、コンクールで演奏し、私たちファゴット奏者にとって「アンテルフェランス第1番」は本当に重要な曲なのです。あのようなヴィルトゥオジティや激しい演奏は、オーケストラでは求められません。しかも「アンテルフェランス第1番」は解釈の自由度が高い。3人が演奏すれば3通りのの全く異なるバージョンを聴かせることになるのです。(ソフィー・デルヴォー)
● サン=サーンス:ファゴット・ソナタ イ長調 Op.168
● レイナルド・アーン/C.コロンボ編:「クロリスへ」
● ラヴェル/ソフィー・デルヴォー編:「ハバネラ形式の小品」
● フォーレ/S.デルヴォー編:「夢のあとに」
● ドビュッシー/S.デルヴォー編:「月の光」
● ドビュッシー/S.デルヴォー編:「美しき夕暮れ」
● ケクラン:ファゴット・ソナタ Op.71
● デュティユー:「サラバンドと行列」
● ロジェ・ブトリ[1932-2019]:「アンテルフェランス第1番」
ソフィー・デルヴォー(ファゴット)
セリム・マザリ(ピアノ)
録音時期:2020年4月
録音場所:ウィーン
録音方式:デジタル(セッション)
プロデューサー&エンジニア:マルティン・クレバーン
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年表付き商品説明ページ一覧
【バロック作曲家(生年順)】
◆
バード [c.1540-1623]
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カッツァーティ [1616-1678]
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ルイ・クープラン [1626-1661]
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クープラン一族
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ダンドリュー [1682-1738]
◆
スタンリー [1713-1786]
【古典派&ロマン派作曲家(生年順)】
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モンジュルー [1764-1836] (ピアノ系)
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ベートーヴェン [1770-1827]
◆
ジャダン [1776-1800] (ピアノ系)
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リース [1784-1838]
◆
ブルックナー [1824-1896]
◆
ルクー [1870-1894]
◆
レーガー [1873-1916]
【近現代作曲家(生年順)】
◆
レーバイ [1880-1953] (ギター系)
◆
マルティヌー [1890-1959]
◆
ミゴ [1891-1976] (ギター系も)
◆
ショスタコーヴィチ [1906-1975]
◆
ラングレー [1907-1991] (オルガン系)
◆
アンダーソン [1908-1975]
◆
デュアルテ [1919-2004] (ギター系)
◆
プレスティ [1924-1967] (ギター系)
◆
ヘンツェ [1926-2012]
◆
坂本龍一 [1952-2023]
【指揮者(ドイツ・オーストリア)】
◆
アーベントロート (ベートーヴェン 、
シューマン 、
ブルックナー 、
ブラームス 、
モーツァルト 、
チャイコ 、
ハイドン)
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エッシェンバッハ
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カラヤン
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クナッパーツブッシュ (ウィーン・フィル 、
ベルリン・フィル 、
ミュンヘン・フィル 、
国立歌劇場管 、
レジェンダリー)
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クラウス
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クリップス
◆
クレンペラー (VOX&ライヴ 、
ザルツブルク・ライヴ 、
VENIASボックス
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サヴァリッシュ
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シューリヒト
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スイトナー (ドヴォルザーク 、
レジェンダリー)
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フリート
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フルトヴェングラー
◆
ベーム
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ヘルビヒ(マーラー 、
ショスタコ 、
ブラームス)
◆
メルツェンドルファー
◆
ヤノフスキー
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ライトナー
◆
ラインスドルフ
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レーグナー (ブルックナー 、
マーラー 、
ヨーロッパ 、
ドイツ)
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ロスバウト
【指揮者(ロシア・ソ連)】
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ガウク
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クーセヴィツキー
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ゴロワノフ
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ペトレンコ
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マルケヴィチ
【指揮者(アメリカ)】
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クーチャー(クチャル)
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スラトキン(父)
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ドラゴン
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バーンスタイン
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フェネル
【指揮者(オランダ)】
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オッテルロー
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クイケン
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ベイヌム
◆
メンゲルベルク
【指揮者(フランス)】
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パレー
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モントゥー
【指揮者(ハンガリー)】
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セル
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ドラティ
【指揮者(スペイン)】
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アルヘンタ
【指揮者(スイス)】
◆
アンセルメ
【指揮者(ポーランド)】
◆
クレツキ
【指揮者(チェコ)】
◆
ターリヒ
【指揮者(ルーマニア)】
◆
チェリビダッケ
【指揮者(イタリア)】
◆
トスカニーニ
【指揮者(イギリス)】
◆
バルビローリ
【指揮者(ギリシャ)】
◆
ミトロプーロス
【鍵盤楽器奏者(楽器別・生国別)】
【ピアノ(ロシア・ソ連)】
◆
ヴェデルニコフ
◆
グリンベルク
◆
ソフロニツキー
◆
タマルキナ
◆
ニコラーエワ
◆
ネイガウス父子
◆
フェインベルク
◆
フリエール
◆
モイセイヴィチ
◆
ユージナ
【ピアノ(フランス)】
◆
カサドシュ
◆
ティッサン=ヴァランタン ◆
ハスキル
◆
ロン
【ピアノ(ドイツ・オーストリア)】
◆
キルシュネライト
◆
シュナーベル
◆
デムス
◆
ナイ
【ピアノ(南米)】
◆
タリアフェロ
◆
ノヴァエス
【チェンバロ】
◆
ヴァレンティ
◆
カークパトリック
◆
ランドフスカ
【弦楽器奏者(楽器別・五十音順)】
【ヴァイオリン】
◆
オイストラフ
◆
コーガン
◆
スポールディング
◆
バルヒェット
◆
フランチェスカッティ
◆
ヘムシング
◆
リッチ
◆
レビン
【チェロ】
◆
カサド
◆
シュタルケル
◆
デュ・プレ
◆
ヤニグロ
◆
ロストロポーヴィチ
【管楽器奏者】
【クラリネット】
◆
マンツ
【ファゴット】
◆
デルヴォー(ダルティガロング)
【オーボエ】
◆
モワネ
【歌手】
◆
ド・ビーク (メゾソプラノ)
【室内アンサンブル(編成別・五十音順)】
【三重奏団】
◆
パスキエ・トリオ
【ピアノ四重奏団】
◆
フォーレ四重奏団
【弦楽四重奏団】
◆
グリラー弦楽四重奏団
◆
シェッファー四重奏団
◆
シュナイダー四重奏団
◆
ズスケ四重奏団
◆
パスカル弦楽四重奏団
◆
ハリウッド弦楽四重奏団
◆
バルヒェット四重奏団
◆
ブダペスト弦楽四重奏団
◆
フランスの伝説の弦楽四重奏団
◆
レナー弦楽四重奏団